126号(1998年11月)15ページ
動物病院だより☆ダチョウの入院
ある寒い日の朝、出勤してダチョウ舎の前を通りかかると、担当者がメスのダチョウが立ち上がれないと言うので見てみると、首はあげていますが座り込んでいました。急いで着替えて再びダチョウ舎へ向かい、担当者と獣医で話し合い、入院することになりました。そこで何人か応援を頼み、捕獲することとなりました。
暴れる元気がないとはいっても、ダチョウは世界で一番大きな鳥です。体重も80から90kg位はあると思われます。そこで、座っているダチョウの顔にバスタオルをかぶせて、その視界を遮りました。こうすると多少落ち着くのです。そして5、6人がかりでトラックに乗せて病院まで運びました。脇の下などを触っても体が冷え切っていましたので、暖房の効いた部屋に入れました。
次に何本か注射して、輸液をたっぷり入れました。夕方になっても立つことはできませんでしたが、顔つきは多少しっかりしてきて、餌を置いておくとついばむようになりました。
翌日出勤して部屋の中を覗いてみると、こちらを向いて立ちあがっており、前日の夕方に足しておいた餌もきれいになくなっていました。
正直なところ、入院したときはもう駄目かもしれないと思っていました。というのも、この個体はかなり高齢で、ここ数年は卵を産むこともなく、オスがいたずらするせいもあるのですが羽の生え替わりもうまくいっていないような状態だったのです。
しかしその後の投薬も餌に混ぜればすぐに食べてくれて、日増しに元気になってきました。餌もこんなに食べるものかと思うくらい食べますし、排便も良好です。病院にダチョウを収容するのは初めてだったため、多少心配はありましたが、掃除などの作業も一緒に部屋の中に入って行なうことができて、何の問題もありません。部屋が広くないので、排便するたびに部屋の掃除を一日に何回もしなくてはならないのですが、その時も「ちょっとどいて」と体を触ってやれば移動してくれてかわいいものです。あともう少し状態が良くなって、気候が良くなればまた皆さんの前に登場できるのではないかと思っています。
(金澤裕司)