129号(1999年05月)8ページ
病院だより「動物園はギャオギャオ園?」
4月は31、5月は60、6月は122。これは各月の病院に収容された野生傷病鳥獣の数です。4月に転入して来た病院1年生の私には、驚くべき数でした。
そしてそのほとんどが孵化間もない赤子から巣立ち間近なものなど、様々な幼鳥たちで、巣から落ちたり、落とされたり、雨風にさらされ巣ごと落ちたり、うまく飛び立てず道路で助けを求めていたものなどでした。しかし、不思議なことに怪我をしているものは少ないのです。そんな子鳥たちも収容された時は空腹と恐怖心で意気消沈しています。
ところが、一夜明けてドアを開けるなり、ムクドリ、ヒヨドリ、スズメ、ツバメ、オオルリ、ハトたちが一斉に餌を求めて鳴き始めるのです。その歓声のにぎやかなこと、鳴き声も1種類なら心地よい音色ですが、この子たちが一斉に鳴き始めると単に雑音に近いものになってしまいます。しかし、餌を求めて一斉にこちらを向くと、この子たちの命が私たち病院スタッフの手に委ねられているという責任感と充実感がこみ上げてきます。
この子たちがすくすくと成長し、一人前に巣立っていくことを願う反面、卒業生を送り出す担任の先生のような寂しさをやがて味わうのかと思うと「・・・・・」。