105号(1995年05月)3ページ
出産ふ化 それぞれの事情
ヤギの出産なんておかしくも珍しくもありません。ああ又生まれるのか、とただそれだけです。
でも、お客様にとっては違います。今、まさに生まれようとする時、生まれたばかりの子が必死に立ちあがろうとする時など、こちらが想像する以上に歓声をあげられ、みるみる内に人だかりの山ができあがります。
その熱気むんむん、思うに臨場感の凄さにあるようです。お客様の位置からわずか2〜3メートル先でメェーメェーとうめいているのですから。血の臭いも相当漂っている筈ですが、それすらも刺激になっているのでしょう。
ヤギは言うまでもなく家畜です。しかも当園の個体は、どれも人馴れっこいのばかりです。人を全く恐れないどころか、どこか友達意識すら抱いているようです。
その親近感が、目の前での出産を披露させるのです。体臭がしっかり感じられる中で、新たな生命の誕生の喜びに浸れるのです。