この上なくやさしいまなざしのカズ、飼育係が名前を呼ぶと、軽く鼻をならして返事をします。担当しているしていないにかかわらずです。開園以来の付き合いに、飼育係は仲間だと思っているのかもしれません。
彼女は話題作りも抜群、何たって夫が変わること２度、それに乗じて子育て日本一の記録を残しているのですから、多くを語らずとも分かって頂けるでしょう。今いるミナ（３７頭目）は、彼女の最後の子供です。
ミナ以後は３８頭目の記録更新どころか、”生み”の苦しみに彼女自身が生・死の境をさまよいました。来園したばかりの頃は半年にも満たない子供であっても１８年の歳月はカズにずっしりと重くのしかかっています。
飼育ハンドブックに２２年１ヶ月の飼育記録がありますが、更にこれを上回った記録もあるようです。そんな記録に迫る、上回るに関係なく、一日でも長く元気な顔を見ていたいと思うのは、カズを見守る者の偽らざる気持ちではないでしょうか。