36号(1983年11月)6ページ
動物病院だより
10月31日朝、ダチョウのオスが、寝室で首を曲げたまま息をひきとっていた。獣医日誌をめくっていくと、
「3月1日、ダチョウのオス、やや元気なく首を下げて歩く。」
と記録してあった。その後、3度ふらついたり、餌をぜんぜん食べない状態に陥った。重い身体を支えている2本の足が、ガタガタふるえ、採食したい気持ちはあっても、じっとして食べられない様子は、見ていてもどかしく、口元まで餌を運んでやれればいいのに・・・などと思ってみたりした。
4月下旬、食欲不振に陥った時、強肝剤、脳代謝機能改善剤等を注射して、5月中旬にはどうにか回復した。そして、今回9月中旬頃から再びふらつきが目立ち始め、採食がみられなくなったので、投薬を開始した。けれども一向に回復の兆しはみえなかった。担当の鳥羽飼育課員が、ダチョウの座っている前に餌箱を運んでいき、『少しでも食べてくれれば・・・』と、面倒をみていたが、3週間まったく餌を食べないまま、静かに息をひきとってしまった。
死因を調べてみると、やはり脳の右側に挫傷があった。(いつか頭をぶつけ、その後遺症でふらつきがあったようである。)
このオスは、2代目で昭和44年12月9日に来園している。現在は、ダチョウ舎に単独飼育しているが、以前はシマウマといっしょに飼育していた。だから、発情している時期に、放飼場のそうじに入り、オスがむかってきて、あわてて木に登ったり、けられてメガネをこわされたり、にげまわった担当者は何人かいる。今は、それもなつかしい思い出となってしまった。
皆さんは、ダチョウの卵をご存事であろうか?普通15×12cmぐらいの大きさである。ところが当園では、まだそんな代物にお目にかかったことがない。以前この『でっきぶらし』にもとりあげたことがあるが、わずかに鶏卵大のものを産んだにすぎない。だから、とうとう父親にはなれずじまいだったわけである。
(八木智子)