179号(2007年12月)5ページ
チンパンジ〜っと観察
10月6日から11月4日まで、今年も「秋の動物園まつり」がおこなわれ、期間中は多くの催しもので賑わいました。2日間あるファン感謝デーでは、人気の「サイさんさわらせてくだサイ」や「ニシキヘビと記念撮影」などのイベントに加えて、今回「チンパンジ〜っと観察」という新企画が行われました。類人猿が道具を使うことはみなさん知っているかもしれませんが、実際に見たことはないのではないでしょうか。「そんなチンパンジーたちの行動を多くのお客さんに見てもらいたい!」という飼育担当者の希望でこのイベントは企画されました。
10月8日のファン感謝デー1日目、天気はあいにくの雨…。黒雲一面の空を恨みましたが、お客さんが一人でもいれば…という思いでイベントは実施することになりました。とは言え、開始時間になっても来園者の影は見当たらずがっかりしていたところ、中型サル舎の前に数人の家族連れの姿が現れたではありませんか。私たちはその家族のもとへ駆け寄り、さっそく一家族限定のイベントを開始しました。
チンパンジーたちに木の枝を手渡すと、チンパンジーたちはアリ塚の穴に枝が入るように形を整え、すぐにアリ塚の中に入ったオレンジジュースを舐め始めました。珍しそうに眺めているお客さんの顔を見てホッと一安心。ところがその直後、チンパンジーたちは雨に濡れるのが嫌で、奥の屋根のあるところに行ってしまいました。そして、ゴロゴロ寝そべりだしたので、「もう終わっちゃったのか〜」と少し諦めかけたとき、1頭がまたアリ塚まで走って行きジュースを舐め始めました。唯一まだ子供のれんげは、雨に濡れるのが嫌でもジュースの誘惑には勝てないようで、ジュースを舐めては奥に走って行くという行動を何度も繰り返していました。その様子がとてもおかしく、お客さんも私たちも雨の中しばらくの間眺めていました。
11月4日のファン感謝デー2日目は、前回の鬱憤(うっぷん)をはらすかのような秋晴れでした。イベントがあることが分かるのでしょう、今回はチンパンジーたちがたくさんのお客さんが集まってくる様子を檻から興味深げに眺めています。佐野飼育員の楽しい解説後、今回も前回と同様にチンパンジーに枝を手渡しました。
その枝をまず受け取ったのはピーチでした。するとピーチは、他の集まってくるチンパンジーたちに突然枝をムチのようにしてたたき始めました。きっとジュースを独り占めしたくて、枝を取らせたくなかったのでしょう。そんな様子にお客さんは大喜びです。そして、他のチンパンジーも枝を受け取ると、全員急いでジュースの入ったアリ塚へと向かいました。必死で舐めている最中、今度は隣の檻の方から突然大きな音が「バーン」と鳴りました。すると、コニー・れんげ親子が驚いたのか「キーッ」と大きな声を出しながら放飼場奥に駆け寄っていきました。そして、不安な時によく見せるお馬さんごっこのような歩き方(お母さんのコニーが子供のれんげに後ろからまたがって歩くんです)でチョコチョコ歩き始めました。これを見たお客さんたちは大爆笑!2頭にはかわいそうでしたが、とてもタイミング良いハプニングでした。この後、多くの子供さんからチンパンジーに関する質問を受け、盛大にイベントは終了しました。
今回、佐野飼育員の協力を借り、またチンパンジーたちの大活躍のおかげで期待以上のイベントとなりました。チンパンジーをはじめ類人猿は、賢い動物だけにイベントがどう進行するか、私たちも予想ができません。生の動物の姿をお客さんに感じてもらうためにも、こんなワクワク感のあるイベントをこれからどんどんやっていきたいと思います。
(後藤 正)