でっきぶらし(News Paper)

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あらかると スローロリス「ナゴミ」の誕生

スローロリスは、齧歯類のリスの仲間によく間違えられますが、霊長類、つまりサルの仲間です。サルのなかでも原始的なサルで、アフリカに生息する同じロリス科のオオガラゴと共に夜行性の動物です。

東南アジアの森林に生息し、およそサルとは思えぬ非常にゆっくりとした動作で、スローモーション映像を見ているような動きをします。

現在、夜行性動物館で展示している個体はワシントン条約違反で保護収容したもので、2003年から3頭を飼育してきました。昨年の5月10日に交尾が確認され、妊娠期間から計算すると11月中旬に出産が予定されましたが、それほど強い確証はもてませんでした。

というのも、狭い展示室で24時間同居しているので、その前後にも交尾があったかも知れないし、あるいは妊娠そのものをしていないかも知れません。

ところが、11月中旬の予定日、その日に出産が見られました。このように予定日に出産することは、長い妊娠期間を考えると普通はなかなかありません。ちょっとした驚きでした。子は、親と同じような体毛が生えており、しっかりと親のお腹につかまっていました。

翌日、観察を続けていると、子は、昨日つかまっていた個体とは違うより大きな別個体に抱かれていました。「あれ!出産したのはどっちだ!」と、その時しばらく考え込みました。すぐ解決はしないので、その後も観察を続けました。

子は、双方の個体を行き来しながら、順調に成育していきました。そこで、双方の個体の乳頭を手探りしてみたところ、出産当日についていた個体の乳頭がより大きく腫れていました。授乳行動もこの個体で見られ、母親であることの確証を得ました。

しかし、その後も大型個体に抱きついていることがあり、果たして順調に成育していくか心配をしましたが、親子ともども何事もなく過ごしていきました。

生後16日目からは、親から離れていることがあり、体もしっかりしてきました。また、単独でいる子を来園者も見られるようになり、名前を募集することにしました。約1週間の募集で255通もの応募がありました。

性別がわからない中、静岡らしい名前や果物から採った名前、スローロリスから連想したと思われる名前等、さまざまな応募がありました。それらの中から、ちょうど七五三の頃に誕生したということで「ナゴミ」という名前に決定しました。

いつもながら思うのですが、この名前募集で困るのは、生まれた子の性別がわからないときです。これは、名前を考える方も選ぶ方も大いに悩むことだと思います。
 
「ナゴミ」という名前のように、他の仲間と共に穏やかに成長していってもらいたいと願っています。

(渡辺 明夫)

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