68号(1989年03月)2ページ
あらかると・動物園が好きなカラス2題
★動物園が好きなカラス2題
(その一)
動物園では、朝早くから数十羽のカラスの集団が園内の至る所でゴミ箱をあさり、ジュースの空きかんやら紙袋やらをそこら中に散らかしています。
それは序の口、いけのそばのホンシュウジカの所では彼等の背中に乗って、我物顔でいます。シカも恐いのか、あまり動こうとはしないで、背中を好きにつっ突かれる有様です。
かつて、ダチョウも同じような目にあった事があり、挙句に穴を開けられ、肉を食べられる始末でした。治療を手伝うかたわら本当にカラスを憎らしく思ったものです。
悪さはこの程度で収まるどころか、子供動物園では飼育係の姿が見えなくなると、これ幸いにテンジクネズミの子をさらって行きます。クジャクバトも時に集団に襲われ、殺されることがあります。
更にまだまだ、園内を群れで歩いているホロホロチョウがいるのですが、彼らが卵を産むと素早く口にくわえて持ち去ってしまいます。全く油断も隙もありません。
(その二)
どうもギャングガラスの仲間ではないものもいます。いつも一羽で園内のあちこちをうろうろして、お客様が捨てた残飯をあさっています。それでもお定まりのコースがあるようで、夕方にはキリン舎の堀の中で水浴びをしてから、循徊するのが日課のようです。
お客様が多い日など、時々二羽で水浴びしていることがあります。彼女か彼氏かは不明ですが、たまには一緒に遊んで行きなという感じです。でもたいていは、一羽で毎日同じような行動をしています。
動物園から離れられないカラス二例。何も言わなくとも後者の方に可愛いというよりほっとするものがあります。
(佐野 一成)