190号(2009年10月)2ページ
やんちゃだけれど、ちょっと心配 2
この夜行性動物館の住人に、フェネックの夫婦がいます。フェネックは北アフリカからアラビア半島に住んでいるキツネの仲間です。
キツネの仲間では最小で、体重1.5kgぐらいにしかなりません。耳がとても大きく放熱の役目をするといわれています。足の裏にも毛が密生していて、熱い砂から守られています。
8月のある日のこと、午前中の園内見回りをしていた職員がフェネックの前を通りかかった時のことでした。フェネック夫婦はいつものようにあっちへ行ったりこっちへ来たり、巣穴へ入ったり出たり動き回っています。
そのうちメスが巣穴へ入ったと思ったら口に何か小さなかたまりをくわえて出てきました。薄暗い赤色の照明なのでよく見えません。巣に戻ってまた出てきたら、今度は何もくわえていませんでした。でも、もしかして赤ちゃんが?
しばらく観察していると、またくわえて巣穴から出てきました。間違いありません。フェネックの赤ちゃんです。目の開いていない、生れてまもない赤ちゃんのようです。
実はフェネックの赤ちゃんが生まれるかもしれないと、担当飼育員は予想していたのですが、予定日になっても生れた様子がなかったのであきらめムードになった矢先だったのです。
フェネックは一回の出産で1〜6匹の子を産むといわれますが、お母さんフェネックがくわえて出てくるのは1匹だけで、巣穴に果たして他の赤ちゃんがいるかどうかわかりません。
子が小さいうちは、ストレスで親が殺してしまうことがあるので、巣穴の中をのぞいて確かめることはできません。
無事に育ってくれという職員の祈りがかなって、8月下旬になると赤ちゃんは自分で巣穴から顔をだすようになりました。まだトレードマークの耳はちいさくて左耳がちょっとたれ耳です。
よちよち巣穴から出ようとすると、お母さんフェネックが心配してすぐ巣穴に戻してしまいます。どうやら赤ちゃんは一匹だったようです。
9月になるとだんだん巣穴の外に出るようになり、連れもどされることも少なくなってきました。トレードマークの耳もピンと立ってきました。
ぴょんぴょん飛び跳ねて自力で岩の上に登れるほどしっかりしてきたのはいいのですが、勢いあまってときどき上から転がり落ちてしまい、見ている方をヒヤヒヤさせます。
しっぽの根元の毛が抜けてしまっているのは、お母さんフェネックが可愛がって舐めすぎるせいでしょうか、ちょっと心配ですけれども元気いっぱいに育ってくれています。
皆さんもぜひ、夜行性動物館でフェネック赤ちゃんのやんちゃぶりをご覧になってください