196号(2010年10月)1ページ
夏の暑さは日時計のように
今年の夏の暑さは特別でした。なにか毎年同じことを言っているような気もしますが、今年の暑さは掛け値なしの猛暑続きだったと言っていいでしょう。
9月にはいって、朝晩すこし秋めいた風が吹いたと思っても、日中は強い日差しが照りつける毎日でした。そして9月半ば近くになって静岡市清水区で36.9度の猛暑日を記録しています。
この暑さで静岡県の酪農業に大きな影響が出ています。家畜の食欲がおちて体重がふえなかったり、乳牛の乳の出がわるくなったりしただけでなく、熱中症で死亡する牛や鶏まで出たそうです。
暑さに弱いのは動物園の動物も同じ。今年の夏はいろいろな動物が夏バテ気味だったようです。
アメリカバイソンは北アメリカの草原地帯がふるさとです。暑さにはもともとあまり強くない動物なので、3頭のバイソンは日中、放飼場で日陰探しです。午前中は寝室の建物の影にはいり、昼頃からは放飼場の真ん中に立っているメタセコイアの木陰にたたずんで日差しをやり過ごしています。
この時期には夏毛に生え換わっているのですが、バイソンの肩から背中にかけて抜けた冬毛が、まるでフェルトで出来たマントのようにまとわりついて落ちず、見るからに暑苦しそうです。せっかく夏毛になったのにこれでは効果半減です。なぜいつまでも冬毛が体から落ちないのか不思議です。
オスのマックは食欲が落ちてきたので、食欲が出るように薬が処方されました。
寒いところにすむ動物はもちろんですが、暑いところにすむ動物でもまともに太陽が照りつける場所には長時間いられません。
マサイキリンのリンの居場所もバイソン同様一日中日陰を求めて放飼場をぐるりと半周です。最初にアメリカバイソン舎との間の塀の影、午前中はお隣のバイソンの放飼場に生えているメタセコイアの木陰(キリンの放飼場にあるニセアカシアの木は、あまり葉っぱが茂っていないのでいい日陰になりません)、そして午後になるとキリン舎の建物のかげで西日をさけます。リンの子供のハートは寝室に入ってしまって日差しを避けることが多かったようです。
中型のサルの仲間、アビシニアコロブスは日中木の枝の上にグデーと腹ばいになっていました。畳の上で昼寝しているお父さんのようです。アフリカ原産のサルですがやはり今年の暑さはこたえたのでしょうか。
一方、ホッキョクグマのロッシーは北極地方原産ですが日本の暑さもなんのその。クーラーの効いた室内と出入り自由ですが積極的に運動場に出てきて元気いっぱい来園者の皆さんに元気な姿を見せてくれました。プールサイドからガラス窓に向って勢いよくザブーンと飛び込んでお客様をびっくりさせたと思ったら次は滝の上からダイビングと、涼しさを演出してくれました。でもお昼ごろになるとさすがに疲れるのかプールサイドの岩に頭をのせてうたたねをしていました。
さて、次に新着動物の話題をひとつご紹介しましょう。
日本平動物園では再整備工事が進んでいますが、その中のひとつ新爬虫類館で、展示の目玉となる動物が8月30日に到着しました。オオアナコンダです。体長約5,5m、体重約40kgの大物です。アナコンダの仲間は南アメリカ北部にすむ巨大なヘビで、水中にひそみ、水辺に近づいた獲物の動物に飛びかかって引きずり込むという生態をもっています。昔の冒険物語では30メートルのアナコンダがいるという話が紹介されていましたが、これは単なるうわさ話で、確認されている記録では最大のアナコンダの全長は約9メートルだそうです。
新爬虫類館は来年の春に開館予定ですが、このオオアナコンダがどんな展示方法で皆さんの前にあらわれるか、たのしみにお待ちください。
動物病院 菅野 展美