198号(2011年02月)2ページ
≪あらかると≫ぼくの療養生活
ゴールデンウィーク明けから3カ月もの間と年末にホッキョクグマの放飼場を留守にしたことを誌面を借りてお詫び申し上げます。
今回はロッシーの療養期間の様子をお話ししたいと思います。
レニングラード動物園の希望により、ロッシーは元々寝部屋と外の放飼場をいつでも行き来できる自由奔放な生活を送っており、餌を食べたり、プールで泳いだり、寝るのも、うんちをするのも(普通は大体同じ場所にするもの)気の向くまま。こうして育ったのと、元々閉じ込められるのが大変嫌いなクマですから、鉄格子、扉、壁などいたる所を毎日バンバン叩きまわり、朝来ると部屋中汚物だらけといったすごい状態。もちろん、ロッシーも真っ黒で、とりあえずは室内展示室のプールに入って体をきれいにするという毎日が続きました。
療養生活が始まり最初の頃は餌を完食することが多かったのですが、だんだん好き嫌いが激しくなり、ヨーグルト、煮イモ、煮ニンジン、牛レバー、牛脂、魚脂、ブドウなど好きなものしか採食せず、キャベツなどはサッカーボールと化し、サバ、馬肉は全く口にせずといった日々が続きました。
それでも放飼場の補修も済み、足の方も良くなったので、夏休みのはじめ頃、放飼場に出したのですが、餌食いの方は相も変わらず。サバ、馬肉は少ししか採食しないので、餌量を変更して様子を見ることにしました。ホッキョクグマは自然界では夏は餌が取れないので、仕方がなくほとんどのクマが陸に上がって昆布とか苔を食って冬が来るのをひたすらじっと待ているという(俗に言う夏眠というやつ)状態です。しかし、ロッシーの場合は、ロシアから来る時に一緒に餌のメニュー表もついていて、夏場はスイカを飽きるまでやってくれ、馬肉はもっと脂身の多い物を、魚は大きいもので種類を多くなど、いろいろな制約があってなかなか金のかかるクマでございます。
とはいえ、ロッシーファンが多いので何かと差し入れをいただき、この夏も乗り切ることができました。
年末の療養期間中は、夏の2倍の量の馬肉を平らげました。お客さんの声が聞こえないさみしさを紛らわすためラジオをかけて、落ち着いて寝部屋で療養させてもらいました。これからの季節は一番好きな季節なので、バリバリ食ってまるまると肥えたホッキョクグマとなることを大いに期待したいと思います。
飼育担当 田地川 恭仁