229号(2016年04月)7ページ
スポットガイドだより① ~1月17日ホッキョクグマ~
スポットガイドだより① ~1月17日ホッキョクグマ~
1月17日・13:30より、ホッキョクグマのスポットガイドを行いました。場所は、猛獣館 1Fのホッキョクグマ展示ブースの前…ガラス越しに、ホッキョクグマのプールの水中の様子を御覧いただける場所です。運が良ければ?水中で彼らが泳いだり遊んだりする様子を観る事ができますが、あいにくガイド当日は当のクマさんが陸上で寝そべったまま動かず、水中での活動シーンを観察する事はできませんでした。それでも、沢山の参加者の方々が集まってくださり、ベテランの現担当者の説明もあって、かなり好評でした。
さて、御存知の方々も多いと思いますが、当園ではロシアから貸与されているロッシー(♂)と、タイから来たバニラ(♀)を飼育していますが、この2頭のホッキョクグマ、実はある秘密?があります。まあ、秘密と言っても私達動物園関係者には秘密でも何でもないのですが……
単刀直入に御話すれば、この2頭の名前は本名ではありません。例えばロッシーの本名は【ピョートル】・バニラは【ヴァニア】です。
こう御話すると、『はあ?』と反応する方が居ますが、要するに、御理解しやすくロッシーに限定して御説明すれば、彼のロッシーという名前は一般公募で付けてもらった日本平動物園での名前であり、【ピョートル】とはロシアで産まれた時に当地のレニングラード動物園で命名され、そのまま国際登録された名前で、この為、人間の概念で表現すれば【ピョートル】が本名になるのです(人間の感覚に照らせば戸籍上の名前の様なものです)。
実は、こうした例は他の動物の場合も多々あり、当動物園で呼ばれている名前以外の、国際登録上の名前をもつ動物は色々います。いや…更に一般の方々には意外かも知れませんが、国際登録上のものも含めて【名前そのもの】が付けられていない動物もかなりいます。彼らに付いているのは、登録ナンバーだけで、その登録ナンバーの次にオスかメスかの記号が添付されています。もちろん、これは公的に命名されていない、という意味であり、各動物を担当している飼育員達が独自に名付けている場合も多いのですが、命名するのを好む?飼育員はそれこそどんな小さな担当動物にも名前を付けます。しかし、付けない人は殆ど彼らに名前を付けません。
ですから、飼育員によっては自分の担当動物を単純にナンバーや『何々~のオス・メス』といっていることもあり、そうした場合、お客様に『この動物、名前は何ですか?』と尋ねられた時、う~ん…と、少し御返事するのに窮することもあります。
ホッキョクグマについては、この場合のいわば逆説で、ロッシーは【ピョートル】・バニラは【ヴァニア】という、二つの名前を持っているのです。
ホッキョクグマ、特にロッシーは、本当に小さな小さな仔グマの頃にロシアから日本平動物園にやってきたので、比較的【ピョートル】という呼び名からロッシーという呼び名に反応が切り替わるのが早かったと思いますが、それでも当園に来園してロッシーと呼称が変わった当初は、ロッシーと呼んでも反応がありませんでした(まぁ、当たり前と言えば当たり前なんですけれどね…)。
そんなロッシーを小さな頃から飼育してきた担当者による今回のガイド。とても、面白かったです。
飼育係 長谷川 裕