276号(2024年02月)6ページ
小型サルたちの大好物は…
突然ですが、サルの大好物は何でしょうか?サルと言えば…バナナを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか?みなさんのイメージどおり、動物園で飼育されているサルたちは甘くておいしいバナナが大好きです。実はこの「サルはバナナが好き」というイメージは動物園でよくサルにエサとしてバナナを与えていたために付いたものです。野生でバナナを食べているサルはごく一部で、小型サル舎のサルたちも野生では果物も食べますが、虫や樹液や種子を主食にしていたりと、様々なものを食べる雑食性です。バナナは栄養価が高くて健康に良い果物ですが、カロリーが高くて糖分が多いので、体が特に小さいサルにバナナを与えすぎると太ったり病気になったりしてしまいます。それは他の果物も同じで、野生のサルが食べる、森に自生している果物は人間が作ったものと比べるとあまり甘くありません。同じ果物でも、畑で作る作物は私たち人間がおいしく感じるよう、とても甘くなるように品種改良されているんです。当園でも以前はサルたちにたくさんの甘い果物を与えていましたが、現在エサを少しずつ変更して野菜やペレットを増やして与えるようにしています。バナナやブドウなどは、以前は毎日与えていましたが、今は特別なおやつとして、たまに与えることにしています。人間は人によって好きなものを先に食べたり、最後に残しておいたりしますが、動物は好きなものを必ずと言っていいほど1番最初に食べます。
バナナをなくした初日は今まで1番に食べていた大好きなバナナがないと気が付くと、なんでバナナがないの?というような表情をしてこちらを見てきましたが、飼育員も持っていないとわかると、しぶしぶ他のエサを食べ始めていました。サルたちの大好きなものを食べさせてあげたいのですが、健康的に長生きできるようにと考えて変更しています。野菜もおいしいので、野菜好きになってくれると嬉しいのですが…。
エサを変える時に気を付けなければならないことは、痩せすぎてしまうことです。急にエサを変えてしまうと体重がガクンと落ちてしまったり、食べなくなってしまうこともあります。体格を見ながら少しずつ変えていくのですが、サルの体は毛で覆われていているため、見た目だけでは痩せすぎているかの判断が難しいので、体重を測るトレーニングも始めました。体重を測るなんて簡単じゃん!と思われるかもしれませんが、これが個体によっては意外と難しいのです。小型サル舎のサルたちは体重計をほとんど見たことがないので、まずは体重計に慣れるところから始めなければなりません。リンゴで誘導して体重計に乗せるのですが、リンゴが食べたすぎて何も気にせずに体重計に乗る個体もいれば、警戒して全く近づいてこない個体もいます。食いしん坊なエリマキキツネザルの「モカ♂」と「シュウ♂」はすぐに体重計に乗ってくれましたが、警戒心が強いヒゲサキの「チャパティ♂」とワオキツネザルの「チーズ♀」は、体重計を見せた瞬間にビックリして木の上に逃げて行ってしまい、しばらくはリンゴも食べませんでした。そのため、しばらく体重計をただ獣舎の中に置いておいて、怖くないものだとわかってもらい、現在はやっと体重計の上に乗っているリンゴを取って食べられるようにまでなりました。
体重計に乗れるようにまでなるには、まだまだ先は長そうですが、サルたちが健康的に過ごせるように、これからもトレーニングを続けていきます。
江林 奏絵