133号(2000年01月)19ページ
「次世代の動物園を考える会」に参加して
私が動物園に入って、初めて「次世代の動物園を考える会」に参加させていただきました。
発足してからちょうど20回目の記念すべき講演、2月20日に行われたのもその意味合いを兼ねてのようでした。参加者は動物園関係者のみならず、動物商やテレビ局、学校の先生など、実にバラエティに飛んだ人達が集まりました。
講演は全部で四題あり、まず始められたのは大学生によるパソコンを使う新しい試みによるものでした。今まで、動物園関係者だけが議論していた経営方針、利用方法、倫理的なあり方などを、一般 市民がインターネットやホームページ上で話し合うという現代にあった取り組み方法でした。
これにより自宅にいながら匿名で参加できるので、本音を語ってくれるそうです。反面 、内容がとても過激になってしまい収集がつかなくなることもしばしばあるとのことでした。
さすがに大学生だけあってとても場慣れしている感じがしたのですが、前置きが長いように思えました。現在どのようなことが話し合われ、どんな問題、解決方法があるかなどの具体例があまりなく、もう少し突っ込んだ内容が合った方が分り易かった気がしました。
次に講演して下さったのは、動物商の方でした。「現在、日本の動物園関係者は国際的にみるとあまり協力的ではなく、もっと海外の会議にでるべきだ。」との意見は、動物園で働く者の一人として耳の痛くなる思いでした。
日本に入ってくる爬虫類の現状や現地の人の声など、実体験にもとづく講演は新鮮な驚きを覚えずにはいられませんでした。日頃、動物商の方との接点はほとんどありませんが、これからは情報をより収集し現状をしっかり把握したいと思います。
三題目の講演は、マスコミ関係者によるジャーナリズムの中における動物園という話をされました。「現在の新聞、テレビのニュースで扱われる動物園は記事が少ない時に載せられるいわゆるヒマネタである。」との厳しい指摘から始まりました。
テレビのナレーションでよく言われる「人がまだ入ったことのない秘境」などは存在しないとのことでした。実体験にもとづいての話であるだけに興味深くあり、説得力もありました。
この方の話はこれだけに終わらず、「これからの動物園の役割は、「種の保存」、「環境教育」である、アミューズメントパークだけの動物園に価値はない。」とのことでした。たしかにもう遊びにくるだけの動物園は必要なく、遊びながら学ぶ「動物学園」でなければ未来はないのかもしれません。
最後に講演してくださったのはゴリラで有名な山極先生のお話でした。制限された時間の中で、今行っているゴリラの保護活動や現状のなどを語ってくださいました。
なかでも強い印象として残っているのは、コンゴに約90頭いたゴリラが内戦により3分の1に減ってしまったことでした。現地の方に理解されての保護でないと意味がないとの話は、緊迫した現実を唐ワえたものだけに切実なものがありました。
さまざまな職種の方が集まって、いろいろな角度から見た野生の動物、動物園のあり方についての話は一つ一つが新鮮でした。この見解をどう生かしてしくのか、私に提起された今後の課題といえるかもしれません。
(岩田 雅也)