89号(1992年09月)11ページ
動物病院だより
秋深まり、山々が、色鮮やかになってきた今日この頃ですが、お変わりありませんか。今年は紅葉が美しいそうですヨ。あなたも紅葉狩りにでかけませんか?
さて、今回とってもうれしいニュースをまずお知らせいたします。子供動物園のインコ舎にいるオオハナインコが、九月十九日に二羽ふ化しました。
このインコは、4年前、ワシントン条約違反で、当園に保護収容された経過があります。そして昨年十月に産卵が確認されました。一個目はスムースにでたようなのですが、二個目がうまくでず、卵づまりとなってしまい、この時はメスの衰弱が著しく、入院させ、治療しました。
二回目は、今年の七月に産卵がありました。しかし、この時も無精卵ということでダメでした。
そして、今回は三度目。一時卵をとりあげてフ卵器に入れようかという話もありましたが、フ卵器の状態が良くないとのこと、すべて親にまかせてみることにしました。
九月十九日朝、担当の堀田飼育課員より電話があり、いつもと違うなき声がきこえるとのこと、さっそくインコ舎に行き、鳥舎の前に立ってみると、今までにきいたことのない声。
「ヒナのなき声!!」
巣箱をのぞきたい気持ちはやまやまなれど、ぐっと我慢することにしました。
餌はたぶん親が口移しで与えるだろうから、消化の良い物を親に与えることにしました。パンにミルクを浸したり、トウモロコシをゆでたりしました。
十月二日、メスが巣箱からでたところ、そのすきに、巣箱をあけてみると、ヒナが2羽確認できました。
その後一週間おきぐらいに体測を行なっています。オオハナインコは、オスとメスで体の色が違います。オスは若草色と黄色、メスは、赤と紫色の羽根です。ヒナも最初の綿毛は暗紫色でしたが、その後はえてきた羽根は、一羽は緑主体、一羽は赤主体とオス1、メス1であることがわかりました。
もうじき、巣箱からでてくると思いますので、お楽しみに。
もう一つのニュースとして、十月末から動物病院の建て直しが始まりました。今度の病院は、診察室、レントゲン室、解剖室、検疫室、入院室、野生傷病鳥獣の検疫室、哺乳類の入院室が、一階にあります。
そして二階には、事務室、小会議室、資料室、臨床検査室、野生傷病の鳥類入院室、フラン室、育すう室があります。
このように、当園の動物に関する検疫、入院室と、野生で傷ついたり、病気になったりして保護されてくる鳥や哺乳類を収容し、検疫、入院する場所を分けてあります。
今までの動物病院を御存じの方は、診察室にタヌキの入ったケージが並んでいたり、いろんな動物が、ゴチャゴチャだったでしょう。こんな状態では、院内感染はまぬがれません。これでは、病院の機能は果たしていません。
そこで、今回はしっかり分けようということになりました。
また、フラン、育すうという仕事も、この建物の中に含まれることになりました。本当は、独立したところにと考えていたのですが、場所がなく、今の育すうの建物も限界がきてしまい、動物病院内に作ることになったわけです。
十月二十二日に第一回の引越し、診療関係は、サイ舎の予備室を借りることにしました。二回目は、当分使わないタナ類やケージを小型サル舎横のプレハブ小屋に運びました。そして最後に入院している動物は、猛獣舎の予備室に運んで終了!!
運び終わった翌日からさっそくとり壊し作業に入り、一週間たらずで、公舎と動物病院はあと型もなくなってしまいました。あっけないものでした。
そういったわけで、来年の八月まで我々はあちらこちらに居候の身なのです。
ですから、入院させる場所もほとんどない状態なので、申し訳ありませんが傷ついたり、病気になった鳥や哺乳類を収容できませんので、よろしくお願いいたします。
(八木智子)