118号(1997年07月)8ページ
あらかると 「オランウータンの食生活」
オランウータンの餌が入ったバケツを持って獣舎へ向かう時、お客様は強い関心を示されます。必ずといっていいほど耳に入ってくる言葉は「ワァー、私よりいいもの食べてる。」です。
その中には、本当に自分達より豪華と思う気持ちもあるでしょう。が、素材の質自体が想像していたよりかなり良い物が与えられていることに驚きがあるようです。
ちなみに、オスのジュン、推定体重100kgの一日の餌の量を書き出してみます。ミルク500cc、プレーンヨーグルト350g、リンゴ3ケ、バナナ4本、オレンジ2ケ、トマト2ケ、キャベツ500g、ハクサイ500g、ニンジン200g、煮サツマ450g、パイン200g、ゆでタマゴ1ケ、干しブドウ、ピーナツ各15〜20粒ほど、で総カロリーは2910カロリーです。値段の方は、1270円くらいになります。
成人で一日に必要なカロリーは2700カロリーくらい。オランウータンの方がごはん1杯くらい多くカロリーを取っている計算になります。
割合によい餌を与えていると思いつつも、担当する者の身としてオランウータンに申し訳ない、そんな気持ちが心の隅にわだかまっています。彼らはこの生活に決して満足していないのではないかとの疑念を抱いてしまうためです。
一生を限られた空間の中で終えてしまいます。どんなに食べ物に不自由しても、自由気ままに生きるのを望んでいるのではないか、ついそのようなことを考えてしまうのです。
一年365日さほど変化のない餌を、死を迎えるまで食べていかなければならないのですから、限られた予算の中でも精一杯質のよいものを与えたいと願います。
食べることはやはり楽しみ、日々過ごす中でのより大きな喜びでしょうから・・・。
(池ヶ谷正志)