138号(2000年11月)4ページ
オランウータン ベリー亡き後
オランウータンのオスのジュンは、最近元気が感じられません。それも無理からぬこと。二才のまだ幼かった頃から十数年も生活を共にしてきたベリーと十一月三日に死別したためです。
ベリーを亡くしての数日間はまだいると思っていたのでしょう、入舎するとベリの部屋をまず覗くのが日課になっていました。しかし、いくら見渡しても姿が見えなくてとうと諦めてしまったのでしょう、もうこの行動はとらなくなっています。それからです、なんとなく日常の行動に覇気が感じられなくなったのは。オランウータンとは、現地の 言葉で「森の人」という意味です。そのイメージからはいかにも孤独が好きそうに感じられますが、そんあことはありません。やっぱり、ひとりぼっちは寂しいに違いありません。
ベリーがまだ生きていて病気療養中で放飼場に出せない時、ひとりでは退屈だろうと段ボール箱を入れてやったらよく遊び、夕方になると小さな切れ端になっ程でした。が、このごろではそういったこともなくなってしまったので、飽きてしまったのかと思い、麻袋を追加しています。
これはちょっと気に入ったようで、部屋にも持ち込んでしまうぐらいなので取りあえず安心しています。それでも、段ボール箱であれ、麻袋であれ、遊ぶ姿に気がはいっていないように思えてなりません。 その姿を見る度につい口に出るのは、「ジュンごめんな。寂しいか、ごめんなベリーを死なせてしまって」という言葉です。ジュンのこの寂しさをいやす特効薬は、新しいメスを迎えるしかありません。一日も早く、それが実現するのを願わずにはいられません。 (池ヶ谷 正志)