99号(1994年05月)6ページ
明日を信じて◎オオハナインコ 三度目の卵は消えたが・・・
野生の生物は、年々減少の傾向にあります。にも拘わらず密輸は絶えません。そうして保護されて行き場がなくなって、動物園で一時預かりの形で一つの獣舎ができあがりました。現在のインコ舎がそうです。
受け入れ先が決まれば、返さなければなりません。当然そうでしょう。が、面白い約束があります。預かっている間に繁殖した個体に関しては、その限りではないのです。増やした園の権利となるのです。
当園でその適用第一号となったのが、オオハナインコです。うまい具合にペアにできる形で保護されたので、そのような幸運を招いたのですが、その道程は決して平たんではありませんでした。
私の知る限りでは、オオハナインコは大変飼い辛い部類に入ります。かつて動物商で働いていたことがありましたが、インコ類で真先に弱ってバタバタと倒れていったのが、このオオハナインコです。
当園のも来園当初、オスがしょっちゅう体調を崩しては獣医の世話になっていましたが、冬の寒さにも弱くて担当者にずいぶん心配をかけていたようでした。
それが二年続けて繁殖しました。無論、オオハナインコだけに限って言えば、日本で初めての繁殖です。それ自体もめでたければ、データそのものも大変貴重です。
そうしてペースにのれば、案外その後はスムースに進むものです。今年は確信を持って望んだ、と言ってもいいぐらいです。私自身も多少関わりのあるところ、信じて疑っていませんでした。
えてして、そう言う時に失敗が伴うものです。担当者がオスもメスもどうも様子が変なので巣穴を覗くと、産んだ筈の卵がなくなっていたとのことでした。
何かのはずみで割れてしまって、落ち着きを失ってしまったのでしょう。でも実績のあるペアです。来年に期待しましょう。