40号(1984年08月)9ページ
ペンギンがとぶ その6 オウサマペンギンの夏やせ
(松下憲行)
相前後してオウサマペンギンの餌食いが、ガクッと落ち出した。2度目に産卵したほうである。体が少し小さいので、一応チビとしておこう。そのチビが、池にばらまく餌、小アジに対してしだいに見向きしなくなっていった。よく見ていても、一度に2〜3尾、1日に2度与えて、せいぜい5〜6尾しか食べないのだ。
フンボルトペンギンに比べて、体格は倍以上ある。したがって餌だって倍以上食べて欲しい。それがフンボルトペンギンの半分以下しか食べない為、日々体はやせ衰え、丸みをおびていた体型もすっかり骨ばってしまった。ここまでくれば、もう放ってはおけなくなり、差し餌、強制給餌を始めた。こんなところで昔とった“きねづか”が役に立つとは、どんな経験でもしてみるものだ。
陸に上がりこんで来た頃を見計らっては、せっせと食べさせた。がっちりと後ろから押さえ、両翼を脇にはさんでしまえば、動くことはできない。いやがるのは最初の1〜2尾くらい。後はすいすいとはいかないものの、惰性でそういやがらずに飲み込んでくれた。ただひとつ、そうめったにしに来なかったが、くちばしの“熱い接吻”だけは要注意だった。首筋やほおにバシンとやられた時は、ひりひりしてたまらなかった。