40号(1984年08月)10ページ
ペンギンがとぶ その6 マカロニペンギン逝く
(松下憲行)
この強制給餌を続けて、気を取られすぎている間に、マカロニペンギンが異変をきたしていた。オウサマペンギンのように、やはり餌を食べなくなったのだが、どこか違った。眼のしょぼつき方がどうにも気に入らなかった。
どういう理由があるにせよ、『食べません。それでは仕方がありません。』で引き下がれない。場合によっては、力ずくでも食べさせなくてはならない。前記のオウサマペンギンが好例である。が、マカロニペンギンには、同様のことが通じなかった。
力ずくでも食べて消化してくれるならいい。それ自体が、先の見える光だからである。吐き戻されたらお手上げで、飼育係としてはここまで。そのマカロニペンギンはすぐに入院をさせた。それは、私にとってギブアップ宣言であった。
再びペンギン池へ帰って来ぬであろう予感は思いの他早く的中し、入院させてからわずか3日後のことであった。心臓に疾患があったとのことで、助ける術はなかった訳だが、それでも言い知れぬ敗北感は残った。
このマカロニペンギンの死で、打ちひしがれている暇などなかった。とにかく、まだ1ヶ月余りしか経っていないというのに、次から次へと驚くほどの変化は止まろうとしなかった。
続く・・・(松下憲行)