60号(1987年11月)2ページ
レンズから見た動物達「雪の中のアメリカバイソン」
動物の写真を撮る時は、できるだけ驚かさないようにとか、なるべく迷惑のかからないように心掛けてはいるのですが、時としてその正反対のことをしてしまうものです。
以前、地面がほんのりと白くなる程度でしたが、珍しく雪が降ったことがありました。こんな日は園内も閑散としていてお客様の姿も見えず、せいぜい喜んでいるのはホッキョクグマぐらいなもので、他は寒さに震え上がってしまっています。風邪でもひかせては大変と、飼育係の心配りで午後には早々と入舎させてしまうぐらいです。
ところがそんな雪の降りしきる中に、ポツンとアメリカバイソンのオス1頭だけが残され、頭や背中に積もった雪を時々全身を震わせて落としながらも、ジィッと立っていたことがありました―。そうです。私がバイソンの迷惑も考えず、雪の中でのシーンを撮りたいが為にわざと出していたのです。
なかなか思ったような構想で撮れず、時間ばかりがいたずらに経過、寒さの中で、もう入れてくれるだろうと待っていたバイソンにとってはさぞかし迷惑なことだったでしょう。口がきけたら、私は大きな声で怒鳴られたのでは・・・。
(鈴木和明)