62号(1988年03月)1ページ
レンズから見た動物達「心に残る動物達」
「ZOOしずおか」の15ページを飾っている開園以来の動物達の中で、私の心に残る動物といえば、トラのカズとロバのマコ。この2頭との思い出がすぐに浮かんできます。
成長し、美しいトラとなったカズは、一生懸命子育てに励む微笑ましい光景を幾度となく見せてくれ、私自身も微笑みながら飽きることなくシャッターを切ったものです。しかしその美しい姿はもう写真でしか見ることができなくなりました。本当にいい思い出をありがとう。
そこで残るのはロバのマコだけ。カズと同様に思い出に残る写真をと、何度も通っているのですが、なかなかいいのが撮れません。それというのも、中に入っていざカメラを構えると、ブラッシングしてもらいたくて体を寄せてくる為です。となると、元来私の好きな奴なので、彼の期待に添うよう、なで回す方に集中し何をしに来たのか分からなくなってしまいます。結局1枚も撮らずじまいに終わってしまったこともありました。
何故この2頭が心に残るかを考えてみると、彼等が開園以来の動物なら、私も開園以来の飼育係です。まだ右も左も分からない新米飼育係の私に、飼育のイロハを教えてくれたのは彼らに他なりません。
その先生の内、1頭はもういません。カズはいい写真が残っているのですが、マコの方は何もないのは気掛かりです。早く彼が元気な内に傑作をと思うのですが、なかなか計取りません。それに、撮れたと思ったらポックリあの世行きなんていやな話ですし、むしろいいのが撮れないが為に長生きしてくれそうな気がします。甘いでしょうか?
何はともあれ、1日でも長生きして、いい被写体でいて欲しいと願うばかりです。
(池ヶ谷正志)