でっきぶらし(News Paper)

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動物病院だより

オランウータンの介添哺乳が抵抗なくできほっとしたのもつかの間、「ゴリラのメスが鼻汁、咳をして、熱もあるよ。」と、担当医から連絡を受けたのは、6月1日であった。小児用の感冒薬、抗生物質、去痰剤等をミルクに混ぜて飲ませ、対処法をおこない、なんとかおさまってきたら、今度はオスにうつってしまった。
日ごろやんちゃなゴリラが、しょぼくれて、うつろな目つきで、どうにかしてくれといいたげ!どんなに調子が悪くても、担当者の言うことしかきいてくれない。だから獣医はオリ越しに、「薬飲んだ?体温はどう?」と、聞くより他に手段はない。担当の小野田飼育課員は、朝から夜まで体温計と飲ませる薬を持って獣舎を行ったり来たり!「こちらがまいっちゃうよ。」とぼやきながらも、わが子を思い、夜中の0時すぎまで様子を見守った。
10日ほど高熱が続いたが、その後ようやく平熱にもどり、食欲、元気も回復したのでこれで一安心!このように、体温測定をしたり、鼻汁を採取し検査ができれば、ある程度その病状を把握できるが、動物園の動物はペットと違い、捕獲したショックで、死ぬ場合すらあり、簡単に検査をやらせてはくれない。だから内臓疾患の場合、その動物の動き、採食、排便の状態をよく観察し、今までの病歴、症例を考え合わせ、治療方針をたてなければならない。そんな時ふと、『動物が透視できるメガネ』はないものかと思ってしまう。

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