280号(2024年12月)4ページ
ぬくとい冬
この原稿を書いている今は夏が終わり秋に入る時季なのですが、残暑が厳しいですね。「暑さ寒さも彼岸まで」とは言いますが、最近は当てはまらなくなっていると感じます。それでも、夜になればだいぶ涼しくなりましたが、日中はまだまだ暑く10月の半ばを過ぎているのにまだセミが鳴いたりしています。大雨も多くなっていますし、異常気象が当たり前になっていますね。地球温暖化と言われ始めてからだいぶ経ちますが、自分が子供の頃には地球はこれから寒くなると言われていたので、未来予想は当たらないなと思ってしまいます。ただ夏は暑さが厳しいので大変ですが、反対に冬は暖かく過ごしやすくなってきています。体は楽で良いのですが、昔はもっと寒かったな~と思うことが良くあります。ということで今回は「昔の日本平動物園の冬は寒かった」というテーマで書いてみたいと思います。
自分が動物園に配属されたのは20数年前。仕事を始めてから初めての冬はかなり寒く感じました。なぜ覚えているかというと、動物園に来てから小学生以来久しぶりに足にしもやけが出来たからです。びっくりしました。自分は基本的に作業中、長靴を履いて仕事をしているので、どうしても足が冷えてしまいます。厚い中敷きを入れてみましたが、底冷えするようで効果はありませんでした。しもやけが出来てしまった要因は色々ありますが、一つに立地があります。動物園は少し標高が高い場所にあり、自分が住んでいる所より気温が低かったのです。さらに近くに高速道路があるためそこが寒気の防波堤になり余計冷えました。当時いた先輩飼育員には「高架下のトンネルをくぐる前と後だと温度が2度違うよ」と言われました。そんな寒い動物園で働いていたある日、一緒に仕事をしていた職員に帰り際に言われました。「今日の夜はだいぶ冷えそうだから獣舎にある水道の蛇口少しひねって水をチョロチョロ出してから帰ってね。水が出なくなっちゃうから」と。「えっ!!出なくなるの」と思い聞いてみると今日の寒さだと水道が凍ってしまい、水が出なくなるとの事。初めの内は気にしていましたが慣れてしまうとだめですね。ちょくちょく出し忘れて帰ってしまう事がありました。そうなると次の日は最悪です。蛇口をひねっても当然、水は出ません。凍った水道が解けるよう少し離れた調理場でお湯を沸かし水道管に掛けます。1回で出るようになってくれれば良いのですが、なかなか溶けなくて何往復もした事もあります。また別の日には水を出して帰ったのですが、その時はあまりにも寒すぎて水が氷柱状になって凍ってしまいました。今では考えられないですね。他にもクモザル島の周りの池の水が凍ってしまい、逃げ出さないよう氷を割りに行った事。メガドームの桟橋の鳥の糞が取れやすいようスプリンクラーで水をまいたら東屋が凍ってしまい氷の城が出来上がってしまった事。などなど、昔は色々ありましたね。最近では水道が凍ることはほとんどなく、池に氷がはることはなくなりました。仕事をする上では楽になりましたが環境的にはどうなのかと思ってしまいます。また寒い冬がきて欲しいような、欲しくないようなと思う今日この頃です。
(岩田)