280号(2024年12月)7ページ
「動物園にて野生を探すもいとをかし」
2024年の大河ドラマでは、清少納言が主人公の紫式部に引けを取らない活躍ぶりですね。清少納言と言えば、「春はあけぼの」で始まる「枕草子」。四季折々の美しさを雅な文体で表しています。
さて、動物園で飼育されている動物は野生ではありませんが、園内には野生動物もたくさんいて、園路を歩いていると四季折々の野生動物に会うことができます。今回は、「動物園で会えるおすすめの野生動物」を「枕草子」になぞらえて季節ごとにご紹介します。
「春」…ウグイス「ホーホケキョ」。最初ぎこちないのが、日ごとに長く上手に鳴くようになるのも「いとをかし」。ただし姿はめったに見られません。アゲハチョウの姿は目立ちます。キアゲハ、クロアゲハ、アオスジアゲハ、カラスアゲハ…。皐月(5月)の頃には、ヒキガエルのオタマジャクシが変態して子ガエルになり、一斉に上陸します。キリン舎、ゾウ舎前の園路にわらわら。うっかり踏まないように気を付けて!
「夏」…初夏はホトトギス「テッペンカケタカ」。街中ではあまり聞けない声。いや、聞いたことあるぞと思ったら、我が家のFAXの送信完了音がこの音でした。「グゴゲゲッ」という声や、白い卵の塊はモリアオガエル。園内各所の堀で繁殖します。トンボも川や堀の上を飛び回ります。シオカラトンボ、ナツアカネ、ショウジョウトンボ、ギンヤンマ、オニヤンマ…。文月(7月)頃になるとクマゼミ、その後アブラゼミ、ツクツクボウシが鳴き出すのは街中と同じですが、市街地では聞かないミンミンゼミの声もよく聞きます。東京では街中で鳴いていますが、なぜか静岡では山間部でしか聞けない印象があります。
「秋」…赤トンボの群舞は夏の終わり、秋の始まりを感じます。今年はそれでも暑かったけど。日中も涼しくなると、爬虫類が石垣で日光浴しているのを見かけます。ニホントカゲ、ニホンカナヘビ、アオダイショウ、シマヘビ、ジムグリ、ヒバカリ、たまにマムシも。見つけても手を出さないで!そういえば先日大きなニホンイシガメが園路を散歩していました。爬虫類館のカメ池から逃げ出したかと思えば、数は減っていない様子。立派な野生個体でした。「夜の動物園」開催時には、虫の声が夜の園路に響きます。来年は屋外BGMをオフにしてもいいかも。この原稿を書いている11月ごろは、ジョロウグモの巣作りがピーク。見上げると園路を横断するほどの巨大なクモの巣が陽光を受けてキラキラ光って見えます。小さい雄クモが大きい雌クモに食べられないようにひっそり網にくっついているのも「いとをかし」。
「冬」…メガドーム向かいの池に渡りの水鳥が集まります。マガモ、オシドリ、オナガガモ、ヒドリガモ…。メガドームにはいない鳥も来ます。園内を流れる小川をのぞいて、街中では見かけないキセキレイを見つけたらラッキー。留鳥ですが、冬には山から低地におりてくることが多くなります。葉が落ちた木が増えるので、枝にとまるいろいろな鳥たちを見つけやすくなるのもまたをかし。
いかがでしょうか。「動物園は年に1回行けば十分」なんて思わずに、季節ごとの自然の変化を探しに何度も来園していただけると、うれしく思います。
(山田)