29号(1982年09月)6ページ
京都市動物園のゴリラの繁殖
(小野田祐典)
京都市動物園では、昭和57年5月15日午後8時41分にゴリラのオスの仔が生まれました。
父親になったマックは、昭和45年に日本の動物園としては初めて京都市動物園で生まれ、人工哺育で育てられたゴリラです。母親のヒロミは、昭和51年5月10日に入園し、推定年齢は3才半だと思われます。親になったマックは11才6ヶ月、ヒロミは9才6ヶ月です。これまで、昭和53年ごろより何回か交尾は確認されていますが、最終交尾の確認は、昭和56年8月13日で、妊娠期間が275日となります。けれどマックが生まれた時には、245日であって、資料を調べてみますと平均妊娠期間が248日であることから、9月13日前後にも交尾があったものと思われます。
出産する前に、母親であるヒロミに、テレビで放映されたリンカンパークでのゴリラの出産及び自然哺乳状況の映像を、檻ごしに5回見せました。これが良かったかどうかは、わかりませんが、ヒロミは、出産後仔をしっかり抱き自然哺育で育てました。その後も順調に育っていましたが、6月28日に鼡径ヘルニアの疑いがあるのを発見し、7月12日に治療のために母親から離し、人工哺育に切り換えました。母親から仔を離すのに麻酔を使用しましたが、寝てからも右手でしっかり仔をかかえており、母性本能の強さが感じられました。
約2ヶ月間、自然哺育で母親の乳を飲んでいたのもかかわらず、すぐに哺乳ビンで人間用のミルクを飲み、育児箱の中でもおとなしく寝ていました。腰には、人間用のヘルニアバンドをはめられていましたが、今では、回復してヘルニアバンドもはずされたそうです。ミルクも1日5回与え、生後3ヶ月ごろより、果汁ジュースも飲むようになって、体重も4300gにもなり順調に育っているようです。
当園でも、まだ6年ぐらい先になりますが、繁殖に導けるよう努力していきたいと思っています。