でっきぶらし(News Paper)

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第30回全国動物園飼育技術者研究会に参加して(京都市動物園で開催)

(池ヶ谷正志)
11月18日〜20日に京都市動物園で開催された、第30回全国動物園飼育技術者研究会に参加しました。参加園館は50園館で、参加者は約100名。当園からも、私を含め3名が参加しました。
研究発表は41議題もあり、1日目は獣医関係、2日目は飼育関係、3日目は施設見学という日程で進められました。2日間共、朝9時30分より夕方5時まで、ぎっしりつまったスケジュールで充実した研究会でした。発表者の持ち時間は、発表が10分、質疑応答が2分という事で、短時間のため参加者に理解しやすいように、スライドを多く使用していました。
1日目の獣医関係の発表は、我々飼育係には細かい事はわかりませんが、大体の事は理解できたのではないかと思います。当園からは、三宅獣医が「アメリカバイソンにおける基底細胞癌について」を発表しました。発表が終わると、懇談会。ここでは自己紹介と動物談義に花が咲きました。
そして2日目は、飼育係の発表で、当園からは佐野一成飼育課員が「マサイキリンの人工哺育例」の発表を行いました。その他、印象深かった発表を少し紹介してみます。

京都市動物園のローランドゴリラの出産及び人工哺育の発表です。(内容は“でっきぶらし”8号にも記載)
交尾した時の年令は、オスが10才1ヶ月、メスが8才10ヶ月でありました。メスは妊娠の確認より4ヶ月目に、オスと別居させ出産にそなえ、同時に担当者は介添哺乳になった時の用意のために室内に入って、餌を与えることにしたそうです。それと、外国の動物園でのゴリラの哺乳シーンをビデオにおさめ、それを毎日見せたそうです。今年の5月15日に出産しましたが、ビデオを見せたことで効果があったのか、初産にもかかわらず自然哺育で順調に育てていました。生後39日目になって子供の陰のうヘルニアに気づき、治療の為に人工哺育に切り換えました。現在では、ヘルニアも完治し、元気に育っていました。昼休みに、担当者の高橋氏に案内され、子供のゴリラに面会しましたが、よちよち歩きぐらいするほどに育っていて、可愛い盛りでした。名前は京太郎と名付けられたそうです。

次に、みさき自然動物園の「インドオオコウモリの人工哺育例」の発表です。
今年の5月16日に2頭出産し、1頭は母親が育てましたが、もう1頭は面倒を見ようとしないので、人工哺育にしました。哺育箱は、ダンボール箱を利用し、天井は金網張りにし、タオルをまるめて母親がわりにつりさげました。ミルクはエスビーラックをさじ1杯に対し湯を50mlでとかして、それをマッチ棒の先にティシュペーパーをまき、ミルクをしみ込ませ飲ませました。今では、リンゴ、バナナ等をよく食べるようになり、元気に育っているそうです。

続いて、京都市動物園の「インドゾウの哺育例」の発表です。
昭和55年6月9日に来園したインドゾウは、生後2ヶ月位の子ゾウで、下痢や衰弱がひどく、危険な状態だったそうです。スキムミルクやドライミルク、ライスがゆを与え、他に点滴注射や整腸剤等の治療を行ったところ、無事回復し元気になった報告がありました。

仙台市八木動物園では、「アフリカゾウの交尾に至るまで」の発表です。
オス、メスの行動をスライドで見せてくれて、大変興味深いものでした。又、発情時のゾウは大変危険だという事が言われていますが、ここのアフリカゾウは全然そのような事はなかったそうです。交尾は1日数回見られ、マウントまでの時間は3分ぐらいで、交尾している時間は15秒程だそうです。完全交尾まで確認されましたので、妊娠を期待していたそうですが、残念な事にメスは最近急死してしまいました。解剖したところ、お腹には赤ちゃんはいなかったそうです。オスはメスがいなくなった淋しさからか?精神的に不安定な状態が続いているそうです。

大阪天王寺動物園では宿題報告として「動物の個体識別」の発表です。
いれずみ、イヤータッグ、首環、つめ環等々実際に装着している動物、器具、物の種類などをスライドで見ることができました。

終わりに、次の宿題調査や開催地を決めたり、研究会に対する意見や希望を話し合い、第30回全国動物園飼育技術者研究会は無事終了しました。
その夜、再び高橋、田中氏のお世話で、飼育係の集いに参加しました。研究会に参加した飼育係と天王寺動物園、京都市動物園よりかけつけた数名の方を合せ、50名位が、京都市動物園の近くにある東山会館において交流会を開きました。自己紹介をして、それぞれのテーブルでおたがいの飼育体験談、情報交換を1時間半、なごやかに話し合い時間のたつのも忘れてしまうほどでした。
さて、日本平動物園では初めて現場の飼育係2名が全国動物園飼育技術者研究会に参加したわけですが、研究発表はもちろん今後の飼育の参考となりますが、全国の他園の飼育係と顔を合せ、おたがいに飼育情報のを交換できたという貴重な体験は、自分にとって、大変良かったと思いました。近県で開催される時にはぜひ、参加したいと思っています。

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