33号(1983年05月)2ページ
人工哺育 (その3) 〜乳母犬〜
以前には、ライオンやトラを人工哺育するのに、一番大切な良いミルクがなかったので、牛乳の中に卵黄を入れて濃度を高めて与えていたが、どうしても病気になりやすく成功率も低かった。
そこで、大型犬の出産したばかりの個体をみつけて、乳母として育てさせる事もした。この場合、慎重にしなければ見なれない子を嫌って授乳させなかったり、攻撃する事もあるので、その犬の排泄物を子の体に塗りつける事も必要である。しかし、最初は人が見ていない間に養子を攻撃することもあるので、完全に親子関係がうまくゆくまでは安心できない。
乳母犬による哺育は、最初の管理をうまく行なえば、あとのこまごました子の面倒は全く乳母が行なってくれるので、手間をはぶくことができる。特にネコ科動物の幼児期には、刺激を与えないと排泄する事ができないので、人工哺育の場合には、湿った綿や指で肛門をこすり、排泄させてやらなければならない。乳母犬の場合には、乳母が舐めて排泄させている。
現在では、成分的にも肉食獣に近いミルクが開発され、乳母犬をさがす必要もなくなり、成功率も高くなっているが、できるだけ親が育てる事が望ましいものである。