33号(1983年05月)5ページ
野鳥 〜シマアジの飛来〜
(小野田祐典)
毎年、日本で見られるカモ類は越冬のために渡ってくるのが大多数です。初秋には、早くもコガモが姿を見せ始め、冬になると最も数が多くなります。今年も全国一斉にガンカモ調査が日本野鳥の会員により、1月15日に行われ、当園でも2つの水禽池に渡来するカモのカウントを行ないました。結果は6種1042羽を数えました。これらのカモ達も、3月には徐々に姿が見えなくなり、桜前線の北上と共に北国に帰っていきます。極少数の何種類かのカモが日本国内にとどまり、繁殖する例が見られますが、大部分はずっと北の方に行って繁殖します。
これらのカモとは少し違っているのがカルガモとシマアジです。カルガモは日本各地で一年中見ることができ繁殖もしています。このように、一年中見られる鳥を留鳥といいます。では、全く移動しないかというとそうでもなく、最近の標識調査によれば国内の移動はもとより、遠く日本海を隔てた大陸の方まで渡っていくのがあるということです。
もう一つの変わり種が、シマアジです。このカモは普通、日本では春と秋にしか姿を見ることができません。それも極く少数に過ぎません。夏と冬は日本以外のところで過ごしています。つまり繁殖地と越冬地は日本以外の所にあるのです。このように春になると北上し、秋になると南下し、その途中に立ち寄って通過していく鳥を旅鳥と言います。秋に観察される時は、オスもメスと同様の色彩になっていることが多く、この時の羽の状態をエクリプス(非生殖羽)と呼んでいます。コガモのメスとよく似ているため、見過ごされることが多く、この時期には幼鳥が混じっていたりすることがあります。
今年は、4月13日に下の水禽池にオス1羽が飛来しました。すでに立派な生殖羽になっていました。昭和56年4月10日に来たオス1羽、メス1羽の時は9日間滞在しましたが、今回は1日でいなくなってしまいました。連れ添いがなかったので長居は無用とばかりに飛びたっていったのかもしれません。日本では繁殖していないかというとそうでもなく、北海道東部と愛知県でわずかながら繁殖記録があります。
一般に生物の分布というものは、固定されたものではなく、絶えずその生息域から外に広がろうとする力が働いています。お互いの力のバランスと自然環境により生態系が保たれ、様々な生物がそれに適応して生きているのです。
また、来年も、この環境が保たれていればシマアジ君も姿を見せてくれることでしょう。