34号(1983年08月)7ページ
出産シーンを目撃 〜 オグロワラビー 〜
(渡辺明夫)
昨年1月、人工哺育で育てられたビビの育児のうに初めて赤ちゃんがいるのが認められました。その時は出産後数日経過していましたが、よく慣れていたので、約6ヶ月間育児のう内で子供の成長を観察することができました。しかし、残念ながら181日に袋から落ちてしまい、動物病院の保育器に収容して人工哺育を試みましたが、5日目に死亡してしまいました。
その後、また観察を続けたところ10月20日ビビの育児のうに生まれた直後の赤ちゃんが、左上の乳首に吸いついているのを認めました。しかしこの子供も約3ヶ月経過したした今年の1月24日、袋から落ちて死亡してしまいました。この時は、すでに子供の腐敗が始まっており、育児のう内にも悪臭がしていたので、何らかのアクシデントにより育児のう内で死亡したものと思われます。
この子供が育児のうよりいなくなってから、3ヶ月近くなったので、ビビの様子を気をつけて観察していたところ、4月17日、3回目の赤ちゃんを見つけました。今回は育児のう内の乳首に吸いついているのではなく、母親のお腹をよじ登っていく子供をみつけたのです。幸いにも写真撮影にも成功しました。カンガルーの仲間の出産シーンを目撃するというのはめったにありません。幸運な機会に恵まれたと思います。
過去の反省から、今度は若オスとビビの妹を別飼育して、群から離しました。とういのは、若オスと父親の発情期の闘争がしばしば見られ、その争いが他のメスや子供におよび、群の秩序がなくなり不安定な状態に陥ってしまうからなのです。こういう状態では正常な飼育とはいえません。別飼育といっても予備の飼育舎があるわけではありません。やむをえずパルマワラビーと同居させました。幸いにも特にトラブルもなく、一緒にすることができました。
今回のビビの子は出産から目撃され、順調に成育してきています。三度目の正直で、何とか無事に育ってくれることを願っています。