でっきぶらし(News Paper)

« 39号の2ページへ39号の4ページへ »

昭和58年度 動物園の1年 後編 10月

オグロワラビーの子袋より顔を出す・トラの人工哺育・他
 先月号、4月の主な出来事の中で、オグロワラビーの出産を目撃した、という話を思い出して頂けるでしょうか。あの時の子が6ヶ月の袋の中の生活を経て、9日にようやく顔を見せ始めたのです。短いようで長い月日でした。
 毎月記録を撮る中で、その日を首を長くして待ちました。というのも、過去に2度、そんな記録を撮り続けながら、途中で無念の涙を飲んでいたからです。
 もっとも、担当者にしてみれば、まだまだ安心できなかったと思います。何度も語っていますが、袋より顔を出してから1ヶ月くらいが大変なのです。無事に育つのか、元のもくあみになってしまうのか、最大のヤマ場なのです。そのヤマは、やって来ました。その辺の下りは、11月のところで語りましょう。
 トラのカズ、最近はどうも面倒見が悪くなりました。出産回数が日本一になった、どうのこうのと言われても、今ひとつすっきり喜ぶ気にはなれません。
 5月29日に続いて、10月11日に今年2度目の出産を迎えたのですが、また人工哺育となりました。今まで人の気配などそれほど気にしなかった個体なのに、妙に神経質になって子の面倒見が悪くなってしまう、そんなカズの心が推し計れず無念な気持ちになって来ます。
 子は順調に大きくなってゆきましたが、前回は失敗し、マスコミを巻き込んでちょっとした騒動を起こしただけに、公開は慎重過ぎるほど慎重になりました。ひとつの命を育てるのは、結果から見れば楽なようであっても、その経過は何が起こるか分からない恐さが、いつも潜んでいるものです。
 14日、ダイアナモンキーのオスがやって来ました。4月15日に腸捻転で急逝したオスの代わりです。
 1週間程の検疫を終えた後、早速オリ越しの見合に入りました。そして、2週間ほど経って同居させた訳ですが、何もなしにすんなりとはゆきませんでした。やはり、古参メスが嫌いました。翌日にはかみ傷が2ヶ所あり、それは痛々しいぐらいでした。
 しかし、当のオスの体に神経があるのかないのか、別段痛がる風もなく、古参メスを恐れる風でもなく、妙に人なつっこくて、私たちがそばに寄れば全くのマイペースで、触ってくれ、餌をくれ、と言った調子でした。
 他、この月の主な出来事として、アシカの体重測定が22日にありました。14.3kgは平均よりかなり少なく、先行きにやや不安がもたれました。又、26日には、アメリカバイソンの子ナオコの右角の角質部分が取れてしまう、そんな事故がありました。

« 39号の2ページへ39号の4ページへ »