42号(1984年12月)6ページ
良母愚母 第二回【ブラッザグェノン(良母になるまでが…)】
種類が同じであれば、どれも似たような顔付きをしていて区別するのも困難なぐらいです。が、よく観察していると、顔付きが似ているどころではなく、性格も様々で強い個性を持っているのがよくわかります。
ブラッザグェノンの場合も、まさにそうでした。ペアで購入したつもりが、二頭共にメスで、最初は体格も顔付きも全くよく似かよっており、双児かと思ったほどでした。しかし次第に示すそれぞれの個性を見ていると、似ても似つかぬものを感じさせました。
オスがいなければ、話になりません。新たにやってきたオスとどうつき合っていったか、それを述べることで、先程のことがわかって頂けると思います。
最初に来たオスは、あえなく病死。次に来たのは尾切れのちっちゃなオス、子供もいいところでした。連れ合いになるどころか二頭のメスに抱かれて、まるで彼女たちの子供のように可愛がられてしまう有様でした。良母になれる素質を見せてはくれましたが、これではお話になりません。程なく放出されました。
さあ、三頭目のオスが犬山市のモンキーセンターよりやって来ました。二週間ほど見合いをさせた後同居。二頭のメスは、性格の違いを如実に表したのです。後に“意地悪ばあさん”と言われる破目になったほうのメスは、オスが餌を取ろうとするたびに追い回しました。そのしつこさは、あきれ返るぐらいでした。
オスとメス、力関係が逆転してそのうちオスが優位に立つさ、と初めのうちは高を括っていました。が、それは次第に放っておけなくなる事態に発展。オスはやせ細って、遂にダウンしてしまったのです。検査の結果では、肝臓までおかしくなっていた、と言うことでした。
体力をつけさせた後、新ためての同居は、さすがに考え込みました。再度繰り返す恐れが、充分にあったからです。さりとて、区別のつきにくいメスをどうやって分断するか、分断した後どうするか…。悩みはつきなくなりました。
メスをよく見比べた後、鼻の下のほくろのような黒い点でもってまず個体識別。おとなしいメスとオスを再度見合いさせ、同居に至ると、次に意地悪なメスを寝室に設けたケージに隔離。こうして分断繁殖作戦を進めました。
オスとメスは、仲よくなるものなのです。仲よくなって当たり前です。今でもあのメス(二年前に結局放出)は例外だったと思っています。今までいろんなサルを見てあんなに徹底してオスをいじめたメスに出会ったことはありません。(逆は、しょっちゅうですが。)子に恵まれなかったのも当然でしょう。
さて、もう一頭のメスのお母さんぶり。賭け値なし、良母の中の良母で“偉い”のひと言で終わってしまいます。六年連続出産し、全部自分で育てたのですから、(一頭だけ途中で病死)称賛は惜しみません。