44号(1985年04月)11ページ
動物園こぼればなし◎耳なしワラビー
カンガルーの仲間であるオグロワラビーの一家、来園時は3頭しかいなかったのに、今は8頭とずいぶん賑やかな家族となりました。が、一番下の子を見るとどうも変です。同じ仲間であるような、ないような。実は耳がないのです。
どうして、と不思議に思われるでしょう。元々なかった?後から生えてくる?それならまだ救いがあります。それは、少しずつかじり取られてしまった結果なのです。それも、こともあろうに母親の仕業によるものなのです。信じられますか。信じられないと思います。私たち飼育係でさえ、最初は他の個体の仕業と考え、監視の利かない夜は分けて飼育したぐらいです。
よくよく見ると母親が、しかも袋より顔を出しざまにガリガリ。これでは、子は逃げようもありません。手をこまねいている間に、袋より顔を出して1ヶ月位の間に、耳はすっかりなくなってしまいました。
(飼育課員 松下憲行)