44号(1985年03月)14ページ
涙を飲んだ動物たち・その後【チンパンジー】
パンジー(メスの名)が出産したがその子は四ヶ月後に流行性感昌で亡くした、追い打ちをかけるようにデージー(もう一頭のメスの名)も流産した、それだけでなくパンジーは以降交尾もさせなくなってしまった、等々のことを前回でも語りました。そして期待はデージーだけにが、締め括りの文句でした。涙はぬぐわれた、と言っていいでしょうか。近況のシリーズ、異種の同居に出てくるチンパンジーのリッキーは、デージーの産んだ子なのですから。
あまりすっきりしない書き方になるのは、人工哺育のせいです。日本平動物園では初めてのことでありながらも、親が育ててこそ本当にバンザイ。人工哺育では、どうしてもうれしさは中ぐらいで収まってしまいます。
でも、どうにか涙をぬぐってくれた動物がやっと現れてくれました。全部が全部、同じことの繰り返しでは、この主題に取り組んだかいがありません。明かりひとつやふたつは、ついてくれていいでしょう。
昭和五十八年二月八日、待望久しかったチンパンジー、リッキーの産まれた日です。母親デージーの“今ふたつ”ぐらいの面倒見の悪さに、私たち飼育係の手によって育てられたのですが、無事に育ってくれた今、ほっとした気持ちがあるのも否めません。
それともうひとつの経過、余談ですが、パンジーの交尾拒否のほう。残念ながら今も続いています。彼女の産まれ故郷である多摩動物公園に問い合わせると「どうもパンジーの家系には、その傾向があるようだなあ」と言うことでした。パンジーは、もう赤ちゃんが欲しくないのでしょうか!?