45号(1985年06月)5ページ
動物園の1年 後編 12月
アメリカバイソンの感冒・ナマケグマの出産他
風邪をひくのは、人だけではありません。どんな動物だって風邪をひきます。もっとも、アメリカバイソンがゼイゼイ、ハアハアして咳をして鼻汁を出したなんて聞いても、可哀そうと思うより、図体が大きいだけに何やらおかしくもなってきます。
そうはいっても、担当者にとっては気が気ではなかったでしょう。母親のメリーが咳をし始めたかと思えば、翌日にはオスにも娘のナオコにも移り出したのです。不安はいやが応にも募り高まったと思います。
風邪を治す薬はありません。暖かくなってから放飼場に出して、午後は早めに入舎させたり、ビタミン入りのペレットをエサに混ぜて体力の維持を図るぐらいが精一杯の思いやりです。幸い大事には至らず、1週間余りで3頭ともに回復に向かいました。
ナマケグマの出産。これは「涙を飲んだ動物・その後」の中で、メーンに据えて述べました。全てはあの中で語り切りました。1984年どころか、ここ数年のあらゆる出産と比較しても、最もビッグなニュースのひとつに入ります。
子がのどをずっとならし続ける。それはおっぱいを飲んでいる時です。かわいい盛りを迎えていますが、成長は思いの他早いもの。見頃も過ぎようとしています。花のように散ったりはしませんが、大きくなってからでは、せっかく胸に描いたイメージと食い違ってしまうでしょう。早めに御覧下さい。
生と死は隣り合わせ。この中間はありません。産まれてくる動物がいれば、死んでゆく動物もいます。泣いてもわめいても、こればかりは避けようもありません。
この月も、冬を漂わせるような死がありました。アネハヅル。地味で目立たなくても開園以来の動物でした。ニセコブラは爬虫類館。開園以来、主のような存在でした。他、アカテタマリンの子がせっかく4ヶ月近く育てながら・・・。栄養補給に問題があったようでした。
老齢ならつく諦めも、子が成長し切れずときては、無念が残ります。無念が残るからこそ、進歩があるのでしょう。幼獣の死はできる限り迎えたくありません。