46号(1985年08月)5ページ
良母愚母 第7回 ◎オオガラゴ(かわいい子を頼むぞ)
夜行性動物において飼育されている唯一のサルが、オオガラゴです。当初はスローロリスでしたが、相次いで他界した為に、同じ仲間のよしみとしてバトンタッチされました。
このペア、いつ見ても仲よくしていて、旧館においてどうにも一緒にできたのがよかったのでウソのようです。縄張りが空白になったところへ、2頭ぽんと一緒にできたのが良かったのでしょう。かつては、メスが死にオス1頭の縄張りになったところへ、メスを持ってきたのがいけなかったようで、その時のオスは、メスを全く受け入れようとはしませんでした。
ペア作りには、様々な経過があります。何の苦労もしないで一緒できたかと思うと、何年も努力しながら結局はダメになったケース、1〜2年かかっても一緒にできればまだいい方でしょう。ショッキングなのは、せっかく一緒にできながら何らかのトラブルで、オスがメスを咬み殺したりしてしまうことです。
旧館でのヨザルは、その最たるもの。見合いをさせた直後から、オスはメスに愛のシグナルを送り、すぐ様一緒にさせても何の問題もないどころか、べたべたくっついて離れないくらいでした。そんなに仲がよかったのが、1年余り後にオスがメスを咬み殺す惨劇に―。繁殖しなくともせめて仲よくだけはしていて欲しいと願う、飼育係の最低限の思いすら打ち破ってしまいました。
“相性”が良かった、悪かった、と片づけてしまえばそれまでですが、単一のオスに単一のメスをつけようとする時、こう言った悩みやトラブルはどうしてもついて回ります。選べず、選ばしてあげられず、かついやになったからと言って別れることもできないのですから―。
オオガラゴには、今のところそんな話を聞くことがありません。そしてスローロリスよりバトンタッチを受けてもう1年以上。今の環境にすっかり慣れ切っている筈です。旧館では死産だったが、新館では堂々かわいいベイビー誕生といきたいところですが―。