48号(1985年11月)2ページ
良母愚母(第九回)・序文
「最近の子供はかわいそうだ。何故なら自然と接する機会がほとんどない」とは、もうずいぶん前に耳にした話です。ほんの身近な野生動物、カエルのような生き物でさえ見たことのない子が、都会を中心に広がってきているとも聞きます。
それどころか、イヌやネコとさえ接したことのない子供も増えているようです。確かに都会の密集した住宅地域の中で下手に飼えば、騒音悪臭で周囲に迷惑をかけるのは一目瞭然。が、だからと言って、全く接しないでは、あまりにも寂し過ぎます。
生き物の摩訶不思議な魅力は、例えわずかな期間でも飼ったり、接したりしたことのある方なら分かる筈です。傷ついた心をいやし、どれ程暖かい心を育んでくれることでしょう。嫌いと言うのは、生き物の良さにまだ気がついていないだけのことです。
こんなことを書いてみたくなったのは、動物との付き合いかたを知らないとしか思えない子供たちの姿が、ずいぶん目に付くからです。園内に放し飼いにされているクジャクを見つけると、たいていの子供たちは追い回します。それは、動物との信頼関係を壊す行為以外の、何物でもないのです。