でっきぶらし(News Paper)

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良母愚母(第九回)・アカガシラエボシドリ

★アカガシラエボシドリ(華麗に舞うも良母はすでになく…)

 華麗に舞うアカガシラエボシドリ。旧館から新館に移ろうとも、熱帯鳥類館の華であることに変わりはありません。熱帯の鳥らしく色あざやかで、少なからぬ気品を漂わせています。
 ところで、そんなに美しい鳥がふ化したばかりの時、何色か御存知ですか。答えは、黒。くちばしの根元だけが、ちょっぴり黄色っぽい感じがします。それが三〜四ヶ月経て徐々に変身してゆき、いつしか親と見間違うばかりになってしまうのです。自然の妙味を感じずにはいられません。もっとも、それはアカガシラエボシドリに限ったことではありませんが…。
 それも遠い昔の話です。一番最初のふ化は十年以上も前のこと。いちばん最近のものでも、六年前。その間に五回の営巣があったものの、わずかに四羽が育っているだけです。ほんの束の間の夢見事のようでもあります。
 しかし、聞けば聞く程の飼育の大変さ。多くの動物園がありながら繁殖の話は滅多に聞けるものではありません。夢見事などと言ってしまっては、苦労して繁殖に導いた当時の担当者に失礼です。飼料はもちろんのこと、巣台の位置や高さにも、うんと気を遣っていたことを忘れてはなりません。
 悲しいかな、子育ての妙味を披露してくれた母親は、最後のひなを育て上げて間もなく皮下をダニに巣喰われると言う、全く想像もできない病気で他界しました。そんなことさえなければ、もう二〜三羽の繁殖が望めたかもしれません。
 現在の新熱帯鳥類館においては、産卵のニュースすら聞けなくなりました。が、今、飛翔しているのは、良母であった彼女が残した子であることは紛れもない事実です。

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