でっきぶらし(News Paper)

« 48号の4ページへ48号の6ページへ »

良母愚母(第九回)・アオショウビン

★アオショウビン(仲はよかったのか、悪かったのか)

 渓流の鳥のコーナーは、最初の思惑とはずいぶん違う方向に向かっています。その雰囲気にふさわしいように、オオルリやメジロ、あるいはコマドリとアオショウビンと同居させたのですが、土台、仲よくするのを願うのは無理な話でした。
 アオショウビンに他の鳥類は次第に隅に追いやられ、中には補殺された個体もいたぐらいです。それどころか、当のオスとメスさえも、それぞれに場所を分け合い、にらみ合っている風でさえありました。
 そんなに気性の激しい、なわばり意識の強い二羽が、いつ頃から仲よくなり出したのでしょう。分からぬは男女の仲と、何か冗談でも飛ばしたくなりますが、それはさておき、産卵が見られるようになったのは、昨年の五月中旬より。展示されてから一年余りが経過していました。
 ここで非常に神経質なところを見せ始めました。飼育係が出入りする扉から最も遠いところへ、排水溝ひとつを逆さにして巣穴を作ってあげて、できるだけ刺激を与えないようにしたのですが、それでも相当に気に入らなかったようで「あなた(飼育係)が入ってガサガサする限り、卵なんか抱きたくないわ」と言いたかったのか、巣穴から卵を放り出す挙動に出たのです。
 これには、さすがの担当者も参り、二度目の産卵が始まった時には餌を与える以外の出入りは、やめざるを得なくなりました。室内がいかに汚れようとも、そのままにするしかなくなってしまったのです。
 こうして、六月二十七日に四羽のひながかえりました。このニュースを聞いた時、少なからず私の胸は揺れました。見たい、写真に撮りたい、が、諦めるしかない、と。神経質すぎる程、神経質な鳥です。部外者が立ち入る訳にはゆきません。
 順調に育っている報告を耳にする中、途中から?と首をかしげたくなるようなことが起き始めました。メス親が、ひなに餌を与えようとするオス親の行動の妨害に出たのです。それは日増しに激しくなり、ひなが巣立ち寸前の頃になると、オス親は巣の周りをうろうろするだけになってしまいました。
 やむなくケージに引き取らざるを得なくなったところで、次いでにエサの喰い負けをして育ちの悪いひなをも取り上げ、面倒を見たがっていたオスの念願を叶えてやりました。そんなこんなで四羽のひなは無事に育ったのですが、いったい夫婦仲はよかったのか、悪かったのか、大いに首をかしげてしまいます。
 本当に仲が悪ければ営巣することはなかったでしょうし、よいのなら最後まで婦助v随で育雛に励んだ筈です。気性の激しい鳥のすることどうも理解し難いことがあります。でも、自力で立派に育てたのです。良母・良父であることには違いありません。

« 48号の4ページへ48号の6ページへ »