48号(1985年11月)12ページ
動物病院だより
先月号でお知らせしたナマケグマの容態は、カロリーメイトではどうしようもない状態に陥ってしまいました。
九月二十三日より食欲不振となり、すでに一ヶ月以上経過しました。鶏肉、パンを食べたかなと思っても翌日は、まったく餌に手をつけないという日々が続き、徐々に衰弱が目立つようになってきました。
十一月七日、状態を把握するため血液検査を行なうことにしました。人間の場合『採血しますヨ』と言われれば、看護婦さんの前に腕をだし、採血してもらいます。しかし動物の場合そう簡単にはいきません。野生動物ならなおさらのことです。弱っているとはいえ、採血するとなれば、麻酔しなければなりません。まず吹き矢で麻酔薬を注射し、横になったところで、網をかけ検査開始です。
後肢の血管から採血しました。お腹のあたりをみると妙にダブダブしていました。左脇腹を消毒し、注射針をさして注射器で吸引したところ、やはり腹水が認められました。
血液、腹水を検査した結果、腹水の中から癌細胞が検出され、血液像からみて癌性腹膜炎と思われました。癌では、現在の医療ではどうしようもありません。昨年の暮れにようやく二世誕生にこぎつけたのに…。
今月は、もう一つ悲しいニュースがあります。チンパンジーのディジーが十月十一日に出産しました。ところが、子供が呼吸する前に臍帯が結ばれてしまうというアクシデントがあり、残念ながら失敗に終わりました。子の体重は二千百五十g。メスで、とってもがっちりとしていただけにくやしく思い、担当の小野田飼育課員は、ガックリ!!
これから寒い冬の訪れとともに、かぜが流行してきます。皆さんも、身体に気をつけて下さいネ!!
(八木 智子)