でっきぶらし(News Paper)

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飼育係体験記 インドゾウ・アメリカバイソン編?V

 こちら側からみれば、どれも同じキリンかもしれないけど、人間と同じでそれぞれに性格があるのだし、親と子供では人間に対する振舞かたもちがうのだということを深く感じた。それをもっとはやく気づかなかった己のバカさも痛感した。
 あとキリンに接してみて、つよく印象に残っているのは、キリンの目の美しさだ。真っ黒で、それでいて潤んでいてキラキラしている。大きな黒い水晶をはめこんであるようだ。オリの外からながめているだけでは絶対に気づかなかったことだけに、この発見はうれしかった。
 そして、川島さんにお礼をいって、ゾウ舎へ行った。だいぶ時間がかかってしまったようだ。だけど鈴木さんは待っていてくださって、ゾウを部屋に入れるところから見ることができた。ゾウ用の出入口の扉はボタンで操作する、扉が開くと、2頭ともそれぞれの部屋に元気よく駆けこんできた。そして鈴木さんのかけ声で、お座りとかひととおり訓練をしてから、餌を食べはじめた。さすが鈴木さんの声には迫力があった。餌の量も多いが、その食べ方もまたダイナミックだ。次から次へと口の中にほうりこんでいる。私も手伝って用意した餌だっただけに、食べてくれてほっとしたような気分だった。
 次は運動場の掃除。ほうきとちりとりを手に、運動場へ出た。さっきまで2頭のゾウがいた。その同じ場所に今、私がいるのだと思うと、うれしくてたまらなかった。もう人気はなく、あたりは静か。太陽も西に傾きはじめて、ちょっとまぶしい…。
 そんな気分に(一人で)ひたりながら、糞をとりはじめた。大きい、びっくりするぐらい大きい。それに、ところどころゾウが唐ンつけてしまってあって、長靴でおもいっ切りけらないととれない。さすがゾウの糞と感心してしまう。これもなかなかの力仕事でいい汗をかくことができた。
 運動場に立って、園内を見渡すのも良い気分だ。もう二度と味わうことのできない気分だろうなぁとも思った。それだけに、今回の体験の有意義さが身にしみてきた。これで本日のゾウの世話が終わった。
 おそくなってしまったが、最後はアメリカバイソンの運動場の掃除。運動場側の扉を開けて、バイソンたちをそれぞれの部屋に入れる。すべて入ってしまってから、私が運動場に出る。ゾウの運動場の掃除ですっかり調子がのってきたので、バイソンの方も続けて楽しんできた。
 バイソンの糞はゾウとにているかなぁー、どうかなぁーと期待していったら、ゾウはしっかりとした形で残っているのに大して、バイソンのはややくずれたタイプだった。でも、山のようなかたまりになっているのは同じだった。
 ひととおり終わったあと、運動場をひと歩きしてみた。バイソンの運動場も、なかなか素敵だ。ゾウのときとはまたちがう思いがこみあげてくる。きれいになったことを確認して名残惜しく、バイソンの部屋の方へもどった。
 オスの大きなジミーくんは、もう餌をほとんど食べおえていた。だから、私は何気なく声をかけてみた。『ジミー、ジミー!!』はじめは、何の反応もみせなかったが、しつこく呼びかけると、おもむろにこちらにやってきて、鉄の扉についている小さな窓(鉄格子がはまっている)から、目と鼻をのぞかせた。
『あー、きてくれたんだね!!』と、私はその大きさと迫力にややびびりながらそばに立っていると、ジミーくんは鼻息を荒々しくさせ、ふきかけてきた。どうも、私がきにいらなかったらしい。『ごめんね!!』でも、私はジミーくんがきてくれてうれしかった。ちらっとでも私の方をみてくれたから。
 そんなこんなで、一日目の仕事が完了した。何ともいえない充実感でいっぱいだった。ぐたぐたして何もしていなかった夏休みに、めいいっぱい働いて”働くことの喜び”を知ったように思う。確かに仕事はきついけど、動物たちのために!!と思うとやりがいがあった。それに、動物たちが一生懸命生きている姿に直接ふれることができたことも、大きな収かくだった。
”よっし、明日もがんばろう”と自然とやる気がでてきた。           (おわり)
                       (県立城北高校 生物部 動物園班 少女A)

「次号からは猛獣舎編を記載します」

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