50号(1986年04月)14ページ
動物園こぼればなし◎ロッキーの嘆き
私は、フンボルトペンギンのロッキーといいます。8年前にここ日本平動物園で生まれ、飼育係のおじさんに育てていただきました。当時はみんなによく可愛がってもらって、ずいぶん甘えたものです。
そうそう、今回はそんな昔話をするために、このページをお借りした訳ではありません。実は、うちの奥さんのことなんです。
愚痴をこぼすつもりはありませんが、なんとまあぐうたらなこと。2年前に先妻を亡くした時に同情してくれ後添いに迎えたまではよいのですが、ふたりの愛の巣へ小枝や木の葉を集めるのは、もっぱら私の仕事。
それに、これまで卵を産んでくれたのも、ただの1回ぽっきりです。彼女はただ優雅に泳ぎまわり食事するだけで、私のすることに全く知らんふりしています。ああ、何も言えないこの弱さ。
実は、前の妻とは3度程卵を温め合ったことがあるのですが、いつもフ化寸前までゆきながら、私のお腹の下でペシャンコ。そんな時に聞こえてきたのが「あいつ(私のこと)は卵の抱き方が下手だなあ」という人間様の声でした。
だからこそ、新しい奥さんとはうまくやって人間様を見返してやろうと頑張っているのに、私のこの気持ちをちっとも分かってくれません。あー、今日もせっせと巣材を運ぶのは私だけかと思うと、なんだかやるせなくなってきます。
(飼育課員 藤沢 誠)