51号(1986年05月)22ページ
病院だより
すっきりした晴天が恋しい今日このごろですが、皆さんお変わりありませんか。今年は園内のあちらこちらでおめでたニュースが聞かれ、それも順調に成育しているので。飼育課内にも充実した雰囲気が漂っている気がします。
たとえて言えば、五月十日ヒトコブラクダの赤ちゃんが誕生していますが、これは三度目にして成功したのです。前回二度はいずれも母親に子の頚部を唐ワれるという事故で失敗に終わっていました。今回はいかすこと第一と、出産後すぐに母親から離して、人工哺育に切り換えました。経過は順調で、担当の秋元飼育課員の顔を見ると「ウェーウェー」と甘えた声でないています。
続いては、タンチョウが五月三十一日一羽孵化しました。メスは多摩動物公園、オスは上野動物園より繁殖目的の為に借りている大切な動物なので、これでみごと目的が達せられてほっとしています。
六月六日にはアンデスコンドルが孵化していますが、これは二年がかりで実現したものなのです。当園のコンドルは、一九八二年より繁殖が見られ、いずれも人工育すうで 三羽成育しています。親元で大きくなってほしいと思ったのですが、いつも三十日ぐらいしか抱卵してくれず、とうてい孵化日数五十五〜五十七日までは無理。
そこで考えたのが次の方法です。まず一卵目はとりあげて孵卵器へ。二卵目はそのまま抱かせておいて一卵目の孵化予定日近くに交換する方法です。昨年は、擬卵を抱かせておいて交換したところ、入れかえた途端に「ありゃ、これは違うゾー」と本物の卵を巣より出してしまい、運悪く石にぶつかりヒビが入って失敗!!今年は二卵目をそのまま抱かせておいたので一卵目と二卵目の区別はつかず、みごと孵化したわけです。
ヒナへの給餌はどうやるか?親が吐きもどし、ヒナは親の口の中にある半消化物を嘴でかじりとって食べていました。抱卵も給餌もオス、メスで交替でやっていましたヨ。
その他アルマジロ、フロリダキングスネーク、ホンシュウシカ、フンボルトペンギン、バン、ダイアナモンキー、カリフォルニアアシカ、アメリカバイソン等が生まれています。フンボルトペンギンは、当園で初めて人工育すうに成功したロッキーの子供です。今回も人工育すうを行なっていますが、この梅雨時が問題なのです。というのは、この時期アスペルギルス症といって肺にカビがはえてしまう病気にかかりやすいので、なんとか体力をつけさせ、のりきらなければならないからです。無事に梅雨あけがむかえられるよう祈っています。
今年はおめでたが良い成績なのでこの調子ですごせれば最高でーす。
(八木智子)