51号(1986年05月)24ページ
動物の食べ物第四回◎パルマワラビー(有袋目・カンガルー科)
オグロワラビーより更に小さなワラビー。それがパルマワラビーです。今では数が少なくなり、他園館でも滅多にお目にかかれなくなりました。扱いは、隣舎のオグロワラビーとそう変わりありませんが、ニンジンやリンゴがあまり好きでなく、木の葉に対してあまり執着がないのが、違いといえば違いでしょうか。
ここで変わった仕草をひとつ紹介。草食獣のウシやシカが反すうするのは御存知でしょう。実は、ワラビーにもそれに近い仕草をすることがあるのです。
朝食をひとしきり食べ終えると、嘔吐するように吐き戻すことがよくあります。それが口の周りを汚すと、他の個体も一緒になって食べたりします。汚いなどといわないで下さい。いわば反すうのようなものですから・・・。
彼らの食べ方は、非常にゆっくりです。一日じっくり時間をかけて食べます。朝早く与えても夕方にはまだ残っていて、次の朝までにようやくなくなっている状態です。
かつて、そのような食欲の示し方故に、餌を午後に与えていたことがありました。結果として、ひもじさを招いたようで、何頭かの個体が弱って死んだ後に解剖すると、毛の球がたまっていたことがあるのです。
午後の餌を待ち切れず、ついつい仲間や自分の毛を舐めて食べた。そう判断せざるを得ませんでした。それ以来、朝に与えるようにして、“毛球症”はなくなったのですから、いい逃れのしようもありません。
(松下憲行)