52号(1986年07月)2ページ
レンズから見た動物達 幻のケッサク
動物園の動物を撮るのに苦労するのは、自然な感じを出すことです。当園のバーバリシープの放飼場などは、周囲が金網のフェンスの上に地面の落差がきつく、まるで崖のような所で飼育されていますから大変なことこの上なしです。
上から狙ってみたり、腹ばいになって思い切ってローアングルで狙ってみたりして、周囲をぐるり、やっとフェンスを入れずに撮れる所を一ヶ所見つけました。
しかし、それからが大変。青空をバックに三頭ぐらいが同一方向を注視している、そんなイメージを追い過ぎて、二週間も目的の場所に餌を置いたりしながらも、それぞれが思い思いの方向を向いてうまくゆきません。
ところがある日、人工哺育中のトラが散歩の途中に放飼場のそばに差し掛かると、バーバリシープ全部がその方向に視線を集中、身動きひとつしなくなりました。これだ!!と思いトラの散歩に時間を合わせ、機会をうかがうことにしました。
ヤナギの葉を目的の場所に置き、待つこと四〜五日。イメージとぴったりのポーズにここぞとばかりシャッターを押し続け、あっという間に三十六枚一本を終了。ン?!
まだ撮れる?アチャー、ななんとフィルムの入れ忘れです。このショックにしばしぼう然。初歩的なミスにやったと思った“名場面のケッサク”は結局、幻に終わってしまいました。
これより前に同じ場所で撮ったボスの勇姿が、けっこう決まっていただけに、返す返す残念というしかありません。
(池ヶ谷正志)