54号(1986年11月)11ページ
ブリーディングローン 八木智子
地球上には、いろいろな生物が生存しています。そしてそれらが相互に密接な関係を保ちながら生態系をつくり、生物間のバランスの上に自然は成り立っています。
私達人類は、目ざましい勢いで発展を遂げてきました。その結果開発がなされ、多くの野生動物は住家を奪われ、いくつかの種は絶滅し、また絶滅に瀕した種も数多く見られるようになりました。このように自然界のバランスをくずしてしまった責任が人間にある以上、少なくとも種の保存を飼育下でも遂行することが私共の重要な任務となってきています。
どのようにしたら良いのか。例えば、A動物園にゴリラのオスがいて、B動物園にはメスがいる、それならいっそのことどちらかの動物園にゴリラを移していっしょにさせ、繁殖を計ってみたらどうか。このような考えから「ブリーディングローン」いわゆる繁殖を計る目的で動物の貸借を行なう契約がうまれました。このブリーディングローンはアメリカで盛んで、少し古いデータですが、1982年度ワシントン動物園では他の施設への貸出しが81種228点、借入れが81種372点となっています。又、シカゴのリンカーンパーク動物園では、各々の合計が119種360点などとなっています。
当園でもいくつかの動物においてブリーディングローンを行なっています。今回はそれらの動物の紹介をしてみましょう。