54号(1986年11月)7ページ
レンズから見た動物達【苦しい小型サルの撮影】
カメラを持っている限り、気になるのは天候です。晴れていればいいという訳ではありません。オリ目がしっかり影となって写るところでは、好天はむしろ“泣き”です。
では、逆に曇っていればいいのか、確かにオリの目の影が動物に張りつく心配はありません。ですが、そこには絞り切れない、シャッタースピードが稼げない等の悩みが生じます。
そこで望みたくなるのが、薄曇りないし、薄日晴れです。そんな日に写真が撮れないとなれば、いい加減「クソォー」という気分にかられます。
この条件が強く関わってくるところのひとつに小型サル舎があります。ちょこまか動くタマリン、マーモセット類を撮るのには、先に述べた条件は欠かせません。
比較的飼育歴の長いワタボウシパンシェから、十月頃より展示され始めたピグミーマーモセットまで、そんな日を選んで今年だけでも数回チャレンジ。時には、光沢を強めないように、ひと絞り開けたりもしました。
“まあまあの出来”に悦に入らせてくれたのは、ムネアカタマリンやピグミーマーモセット。何度も泣かせてくれ、没のフィルムを多く作ってくれたのは、アカテタマリン。レンズを向けると神経質になり、ひととこにまずじっとしていてくれませんでした。
一枚ゝの写真を見て振り返れば、人にどの程度馴れているかも、大きく作用しているようでした。レンズを突っついたり、覗き込みにくるのがいるかと思えば、明らかに怯え嫌悪感をはっきり示すものがいたのですから。
こんな調子では、これからも度々泣かされるでしょう。何せ腕が悪いだけでなく、勘の鈍さが伴なうのに、なお気象条件を考えながら、敏しょうに飛び回る小型サルを追おうというのですから、当たり前のことです。でも、「森林の妖精」に魅入られている限り、やめられそうにもありません。