55号(1987年01月)4ページ
動物の食べ物 第五回【モモイロペリカン】
日本平動物園の中で最も“自然”を感じさせるのは、小高いところに道路をはさんである二つの池です。もっとも、自然を感じさせる池だからといって、野鳥だけで何も飼育されていない訳ではありません。
コブハクチョウを初め、何種類かの鳥類が飼育されているのですが、とりわけ印象的なのはモモイロペリカンです。体が大きいだけに、何処にいてもすぐに目につきます。
食べ物は、むろんサカナ(コアジ)。どんなふうに与えられているか御存知ですか。広い池ですから、まさか池にまいて好きにお食べ、という訳には参りません。そこで時間帯を決めて投餌と相成る訳です。うまくキャッチして食べるそうですが、残念ながら見たことはありません。
実は、意外に神経質なところがあって、お客様がいくらそばに寄ってきても平気なのに、飼育係をどうも嫌う傾向にあるのです。ヤジ馬根性の強い私も、その為についつ遠慮して未だに見ることができないでいます。
野生では、ペリカンは集団で猟漁をするそうです。横一線に並んで、どんどん、どんどん浅瀬に追い込んでゆき頃合を見計らって、魚網のようなくちばしで、見事にすくいあげるということです。
そう、何かを考えられましたか。彼らの足元はもちろん池、コイがうようよいます。当然、食べているのではないかと想像します。
これも聞いた話で、直接見た訳ではありませんが、最近どうもエサを食べに来ないので、おかしいと思ってペリカンをよく観察していると、何やら大きいものをゴクン、ゴクン、よくよく見れば「コイ」だったそうです。そんなにおいしいものを食べていたら、死んだコアジなど食べにくる筈がありません。
しかしながら、そうそううまい具合いにありつける筈もなく、それにコイのほうも警戒心が強くなったようで、最近はそんな話をとんと聞かなくなりました。