58号(1987年08月)2ページ
動物園こぼればなし◎恐いもの知らず
動物園では、いろいろな種類の動物が繁殖しています。親が育てる場合と、親による子育てがうまくいかず、やむをえず、子や卵を取りあげて、人工で育てる場合とがあります。
子や雛は野生状態のときと違って、外敵に襲われることはほとんどありません。厳しい生存競争にさらされてきたのではないので、しばしば人間や他の生き物に対して警戒心が薄く恐いもの知らずということが見受けられます。
最近では、ホロホロチョウにこんな例が見られました。
昨年、たくさんの雛が孵卵器で孵化したので人工育雛で育てました。大きく成長したので、フライングケージ横で放し飼いにすることにしました。最初のうちはとまどっていたのが何日かすると慣れてきてずうずうしくなり、園内を、ギャッギャッギャッと鳴きながら、集団でかけ回るようになりました。
体形に似ず、飛翔力もある為、高い建物にも平気で登るようになりました。
そんなある日、猛獣担当者より、ホロホロチョウがライオンの放飼場に入り、ライオンに追われて堀の中に逃げ込んでいると連絡がはいりました。
速やかにライオンを寝室にしまい込んでもらい、排水口のすき間に避難していたホロホロチョウを救い出しました。
ラッキーなことに、傷はたいしたことはなく、簡単な手当ですみ、群れに戻すことができました。
アフリカの原野で生まれ育てば、このように天敵である猛獣類に近づくこともなかったことでしょう。これを教訓に、生き延びていくことの厳しさを身につけていってもらいたいものです。
(飼育課 渡辺明夫)