59号(1987年09月)6ページ
動物の食べ物 第8回 夜行性動物館その1 オオガラゴ
もう3年くらい前になるでしょうか。赤ちゃんが食べられてしまった、そんなショッキングな事件が起きたことがありました。過去に幾度も話をしていますが、それが食肉獣の仲間なら、おかしくも珍しくもない事件です。しかし、オオガラゴは原猿類の仲間、下等とされながらもれっきとしたサルです。
旧館においては、オスとメスを同居さえさせられなかったのに、新館においてはまずそれが可能に。その上に“おめでた”の朗報が飛び交い、いつ生まれるか楽しみにしている最中でしたから、ショックはいやが上にも倍増しました。
生んだメスにではなく、同居しているオスに大いに嫌疑がかけられました。彼らは一般のサルと違って社会性が乏しく、“恋の季節”以外は単独行動です。それだけでなく、食性も一般のサルのように主として植物食の雑食ではなく、かなり動物食の強い雑食であることです。野生では、小鳥や昆虫、あるいは小鳥の卵を、思う以上の高い比率で捕食していると思われます。
だいたい彼らに父性愛なんてある訳がないのです。そこへ動物食が強いとなれば、メスがおいしそうな“エサ”を持っているので奪ってしまった、そう推理されてもおかしくはないでしょう。 以後、メスが妊娠したと思われると、オスは動物病院へ“島流し”です。それで赤ん坊は“エサ”になることはなくなったのですから、嫌疑はいよいよ濃厚、推理は間違っていないと考えてよいでしょう。
念を入れ彼らのメニューをていねいにするなら、朝ならぬ夜の午前中にリンゴ、ミカン、バナナ、ブドウ、ハクサイ、ニイモ、パンが与えられています。そして閉館後にヒヨコが一羽与えられています。